これはいつ帰ればいいのかと聞いたら、ちょくちょく顔を出していたアスマさんに「適当でいいんじゃないか?アカデミーでもあるまいし、時間なんて決まってないだろうさ」なんて言われたので、本日は重役出勤である。嘘です寝坊しました。
ハヤテさんにもらった飴玉を口の中でコロコロ転がして火影邸に向かう。
なんとなく、他国の忍者が少ないように感じる。この調子ならもしかして、昨日カカシさんに運ばれる必要なかったのではないだろうか。まあ私は立派な一般人なんだけれど。
到着した火影邸はなんだか昨日より慌ただしい気がした。とりあえず火影に挨拶を…と火影室に向かうと、三代目は席を外していて。
えーと、どうしよう。無許可で待機室にいても大丈夫かな。ふらふらしてたら不審人物扱いされないだろうか…。
目の前を早足で行きかう忍者さんたちを見送る。私が言えたことでもないけど、火影邸で一般人見つけたら普通声かけたり追い出したりしない?この前も思ったけどセキュリティ甘くないか……?
ああもうめんどくさい!今日の商売は一旦休憩!!
来た道を引き返して外に出て、近くの木陰に腰を下ろす。昨日遅くまで札を作ってたからか、すぐに眠気が襲ってきた。
そろそろハヤテさんがピンチなのは覚えている。確か予選後の本戦前だったはず。私が直接関わるのは無理だけど、なんとかできないもんかなあ。飴ももらっちゃったし、なんか返さないと。
「おーい、起きろ札屋」
「風邪ひくぞー」
二つの声に目を開けると、イズモさんとコテツさんが視界に飛び込んできた。日はだいぶ傾いている。やっべ、普通に爆睡してましたわ。
「ん、あー…おふたりさん、おはようございます?」
「おはようってお前なあ…」
「もうすぐ夕方だぞ?」
夕方…あっちゃー。二、三時間は寝たかもしれない。苦笑しながらもコテツさんが差し出してくれた手を借りて立ち上がると、軽い立ちくらみがした。少しだけ目をつぶってやり過ごす。よし、大丈夫。
「おい、お前顔色悪くないか?」
「あー、大丈夫、です。寝起きなんで……」
「そもそも、なんでこんなとこで寝てるんだ」
「慌ただしくて、居づらかったので……」
頭をイズモさんの手に掻き回されながらふわふわ答えると、上から納得したような声が降ってきた。
「試験初日だからなあ。仕方ないな」
「試験って……え、会場別のところじゃないんですか?」
「まあ、直接的には関係ないが、木の葉を総括してるのはここだ。そりゃあ慌しいだろ」
おっと……もっとさくっと始まるイメージがあった。一次試験とかアカデミーだったし。ああでもそっか、他国の忍者いっぱいくるんだもんなあ。三代目様も忙しいか。えー、どうしよ。
「じゃ、帰ろかな……」
思わず口から飛び出した言葉を聞き取った二人は、一瞬だけ目を合わせるとニンマリと笑った。
「じゃ、俺らと飯でも食いに行くか」
「え、」
私今帰るって言いましたよね?と思っていたら、コテツさんにひょいっと持ち上げられた。いや、だから
「あの、任務は」
「今日のは終わりだ。半休もらった」
「任務っつっても全部試験関係だけどな」
飄々と会話を続ける二人にため息をつく。なんで急に持ち上げたんだ。
「いや、でも…… とりあえず、降ろしてください……」
「目、覚めたか?」
コテツさんの問いに頷くと、すぐにストンと降ろされる。いやほんとになんだったんだ。
「よし、行くか。何食べたい?コテツが出すからなんでもいいぞ」
「お前の分は出さねえよ」
「ちぇー あ、札屋、昼飯食べてないよな?」
「え、まあ……寝てたんで……」
この時間ならどこでも空いてるだろーなんて声を聞き流す。寝起きにインパクトが強い…… 呆然としていると、再び頭をかき回された。