気を取り直して商売をしようとして足がとまる。
どこに向かえばいいんだろうか…待機所みたいなところがあればいいんだけど…というか待機所ってあったっけ… ?

とりあえず奥に進もうと、来た道とは反対方向に足を進める。迷ったら誰かに聞こう。

と、後ろから声がかかった。

「よっ、さっきぶりだな。札屋の嬢ちゃん」

「あ、さっきの…」

バンダナのイケメンさんと続けようとした口を閉じる。いつの間に後ろにいたんだろう。忍者こわい

「そーいや名前言ってなかったっけか。俺は不知火ゲンマだ」

「あっと、札屋のユズです」

なんかそんな人いた気がする…聞いたことあるわ…と思いながら自己紹介すると、ゲンマさんは、持っていた書類を肩に担ぎ、いたずらっぽく笑った。

「おう、話はいろんなとこから聞いてるぜ。それにさっき、火影様に案内を任された」

着いてこいと言い残して歩くゲンマさんの後を追う。迷いそうなので助かった。


────


「この辺は仮眠室だったり更衣室があるところだ。まあ無闇に入るなよ」

「わかりました」

火影邸ってすげぇ…無闇になんて入りません入れません。ゲンマさんが説明しない部屋もいくつかあったが、詳しくは聞かないことにする。暗部とか出会っちゃったら怖いです。確か地下に根とかいた気が…ん?

「あの、ゲンマさん」

「んー?」

振り返らずに返事をしたゲンマさんに質問する。

「さんだ…火影様ってどのへんに住んでるんですか?」

あー、といって振り返り、真面目な顔で言った。

「悪いが、それは機密事項だな」

「…すみませんでした」

確かに秘密にしないとマズイですよね!!と思い、素直に頭を下げる。と、頭にポンと手が乗せられた。

「…いや、悪かったな」

「いや!私が立ち入った質問を…」

驚いて顔を上げると、気の抜けたような笑顔があった。なんで笑われたんだ…

さて、と再び背を向けたゲンマさんの後を追いかける。
すぐに立ち止まり、キィ…と扉を開けて言った。

「ここが待機所だ。ちなみに隣は給湯室。まあ、自由に使っていいだろ」

「給湯室まであるんですか…!」

「ああ、いろんな奴が持ち寄ってるからな。一式揃ってるんじゃ…そんなに喜ぶことか?」

顔に出てるぞーと言って誰もいない待機所の椅子に腰掛けたゲンマさんは不思議そうに首をかしげた。

「だってコンロとか水道とかあるんですよね」

「そりゃあるだろ」

おお…と漏らした声を聞いたのか、まさかお前…と呟かれた。

お察しの通りです!

「うち、電機ガス水道通ってないんで…」

「はあ?」

ポーチから水と火の札をだしてひらひらと見せる。

「これ使ってます。慣れれば便利ですよ?いかがです?」

大きなため息をつかれてしまった。解せぬ。

冗談ですよと笑い、案内の御礼として札を何枚か差し出すと、ため息と共に頭をなでられた。




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