「あの、アスマさん。本当にごちそうさまでした」
「気にすんな。半分以上はチョウジの分だしな。お前が気遣うことじゃねえさ」
ぺこりと何度目かのお辞儀をすると、アスマさんは笑って答えた。
でも、レジ横の金額がものすごいことになっていたことを知っているので、気遣うなというのは無理な相談だったりする。
「…今度、お礼しますね」
「ああ、ありがとな」
お金以外でお礼できることを考えないと…やっぱり札かな なんて考えていると、少し離れたところからいのが声をかけてきた。
「ユズー!!送ってくわよ!」
「あっと、明日も任務あるんでしょ?いいよ。私は大丈夫」
いざと言う時にはこれがあるしね。とひらひらと札を振ると「それもそうね」と納得したようだった。
「じゃあね。今日はありがとう」
「こちらこそね!楽しかったわよ!」
「また焼肉いこうねー!」
「お前は焼肉行きたいだけだろチョウジ。またな」
遠ざかっていく背中を見て、アスマさんにどんなお礼をしようか考えながら家までの道を歩き始めた。
夜も更けてきて、あくびをしながら家に向かう町外れの細い山道を登っていると、道脇の森からなにやら音が聞こえてきた。
狸や鹿だったら捕まえて食べようと、薄暗い森に目を凝らす。食料って大事です。
じいっと見ていると、少し離れたところに人影が一つ。
小さいので子供かとも思ったが、とりあえず逃げることにした。
食べられないなら闘いません。
駆け出そうとしたその瞬間、ドサりと倒れる音が。
これは見ないと後悔するだろうな…
罪悪感と興味が膨れ上がって眠れなくなる気がする。
少しだけ深呼吸をして、ポーチから一番強力な札を何枚か取り出す。
いつでも発動できるようにチャクラを練って、恐る恐る近づくと、見たことのある黒髪の少年が仰向けに転がっていた。
サスケだ。
ふっと、張り詰めていた緊張を解く。
修行中にそのまま寝てしまったんだろう。
…すごいなあ。私はそこまで頑張れないや。
見つけてしまった以上起こさないといけないのだろうが、さっき寝落ちたならもう少し寝かせてあげた方が良さそうだ。
かといって私がここに残って起こすのもなあ…
正直眠いし焼肉臭いので早く帰りたい。
少し考えた後、時間差で起こせばいいのではと思い立ち、ワイヤーと威力最小の水の札を使って簡単なトラップを仕掛けた。
アカデミーの教科書に乗ってるやつです。起爆札を水の札に変えるだけの簡単な作業!
2、30分後にサスケの顔面に水が落ちるようにセットして、そのまま逃亡した。