「こんなに山菜あってどうするのよ。売るの?」

「いや、食べるけど…」

いのからの質問に、そうか山菜を売る手があったかとうっすら思いながら返事を返すと、アスマさんが少し戸惑いながら訪ねた。

「なあユズ。お前の食事ってもしかしてこれで全部か…?」

「まあ、今日は一応」

戸惑いながら答えると、山菜の鍋を眺めながら私の返事を聞いていたチョウジがカッと目を開き、私の肩を掴んで言った

「それは、良くないよ。ちゃんと食べないと身体壊しちゃうでしょ?」

「…はい」

チョウジが子供の食生活を叱る母親の目をしていた。

「お肉がない生活なんて、僕には信じられないよ…」

と、未だにぶつぶつ言っているチョウジ(だが鍋の前を陣取っている)と、

「確かにユズって細いというかちっちゃいわよねー。栄養が足りないのよ。なんでこんな食事ばっかり…」

もー、と言いながら、私の腕を掴みあげているいの。
返事は空笑いで返した。

私と比べたいのの腕には、しっかりと筋肉がいている。
同い年でも、ちゃんと忍者だからなあ。こんなところでも差が出るのか。

ちょっとしんみりしていると、シカマルが口を開いた。

「なあアスマ、今日は焼肉行くんだったよな」

めんどくせーが、と付け加えるシカマルを見て、いのとチョウジが目を輝かせた。



ドナドナされて、到着したのはお馴染み焼肉Q。
ここ、安くて美味いと御近所で評判だったりする。普段うろついてるので噂も早いです。どうも札屋です。

席に案内されるなり奥に押し込まれ、シカマルが隣の出口側に座った。

ユズは 逃げられない!

あきらめの気持ちで、チョウジが「ここからここまで、三人前ずつ!」という豪快な頼み方をしているのを、呆然と眺める。今そのメニュー3ページくらいまたいだよね?

と、向かいに座っていたいのが肉を飲み込んで言った。

「そういえばユズ、最近見ないけど何してたの?まさか札屋やめてひきこもってるんじゃないでしょうね?」

「いや、そうじゃなくて…。この前、街に他国の忍がいたから…今はちょっと休業中。変なモノ扱ってるしね」

肉をとろうとするとチョウジに掠め取られるので、玉ねぎやらピーマンを中心に頬張りながら返事をする。
山菜より甘くて美味しいです。
山菜も慣れれば美味しいけどね。エグミがね。

三人はああ、と納得したような顔をして、アスマ先生が口を開いた。

「そりゃあ中忍試験だな。各国の下忍が集まって、中忍になるための試験をするんだ。…つっても、ユズはアカデミー上がりだから知ってるか」

「むぐ…僕たちも出るんだよ」

めんどくせーけどな、とぼやくシカマルを横目に、アスマ先生がタバコの煙を漂わせながら再び口を開いた。

「で、どうするんだ?試験は一ヶ月以上あるぞ。その間ずっと収入無しは厳しいだろう?」

いっかげつぅ!?と叫ぶいのとチョウジ、まじかよ…と呟くシカマル、そして無言で頭を抱える私。

そうだった忘れてた!本戦まで準備期間あったし我愛羅とか里に残るし誰か殺されるんだった…!!なんか…あの…病弱っぽい人…!

「どういうことよ!」

「いや、予選と本戦の間に一ヶ月の準備期間があってな」

「じゃあその間は他国の忍が木の葉にいることになるの?」

という会話を聞き流しながら、今後のこと、主に食費について考えていると、とりあえず今のうちに食えよ とシカマルに肉を差し出される。

ありがたく受け取って頬張った。美味い。

シカマルは自分の分の肉をしっかり確保しつつ、三人が落ち着いた頃に口を開いた。策士である。

「なあアスマ。ユズが火影邸で商売するってのはどうなんだ?あそこなら木の葉の忍以外入ってこねーだろうし、試験中も任務が全部ストップするわけじゃねーだろ。なら出入りはできるし需要もある。」

驚いて肉を喉につまらせそうになった。

「いや、私忍者じゃないから、火影邸に入るのはちょっと…どうだろう」

「大丈夫じゃないか?忍具売ってりゃ関係者さ。火影様に頼んでみるか」

アスマ先生がにやりと笑った。
そういやこの人火影様の息子だったな…



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