とりあえず場所を移動するぞ、と連れてこられたのは使っていない空き教室。
ネジ先輩が適当な椅子に腰掛けたので、微妙な距離を保ったまま私も腰掛けた。

心臓がバックバクであります隊長!いつ何でバレたのかがさっぱり分かりません!そんなヘマはしていないはず…!!

ひぃ…と思いながら無言に耐えていると、ネジ先輩が口を開いた。

「で、お前はどこの忍びだ?俺の事を知っているようだし、木の葉か?それとも砂か?」

こちらを見ずに問いかけてくるネジ先輩の口調は淡々としていて、全く表情が見えない。やだ忍者こわい

「えっあの、なんの、話でしょうか…?」

「とぼけても無駄だぞ?先程から俺の髪ばかり見ているだろう?それに俺の名も知っていた。友人の従兄弟に会ったにしては、あまりにも"過ぎる"反応だ」

それに、とネジ先輩はこちらを向いて続けた。

「格闘技部にタロウなんて奴はいない。俺らの班のメンバーだけだ」

ニヤリ、と笑ったネジ先輩は、髪型が違っても、制服を着ていても、やはりあの日向ネジで。
場違いにもミーハー心が疼いてしまった私は、思わず口元を緩めてしまった。

「嵌めましたね…日向は木の葉にて最強、ですか?」

「やはりな…。で、お前はどこの忍びだ?まあなんであっても今世で争う気はないが」

軽く笑って頬杖をついたネジ先輩は、どこからどう見ても普通の男子高校生だった。いや訂正。普通よりイケメンな男子高校生だった。

「私は、えっとー」

ところで私のことはどうやって説明すればいいんだろう…と悩んでいると、ネジ先輩は微妙に勘違いをしたのか、「まあいい」と言い放った。

「お前がどんな忍であろうとも、今世には関係ないしな。詮索する気はないさ」

「いや、あの私は、ネジ先輩の敵じゃ無くて」
というか忍者でもなくて!

「あの時は、もう敵なんていなかったしな」

頬杖をついたままこちらを向いて微笑んだネジ先輩に、思わず口を閉じる。

そっか、この人は、あの先を見ていない。


「一つ、聞いていいか?」

視線をそらして、呟いたネジ先輩の声色は願うように聞こえて、私は小さな声で「はい」と答えるしか出来なかった。

「ナルトは、火影になれたか?」

「…はい。6代目は、はたけカカシさんが務めましたが、7代目火影はうずまきナルト…さんです」

「そう…か」

少しの間、お互いに無言になる。
ふっと息をついて、私は口を開いた。

「…私からも、いいですか?」

「ああ」

こちらを向いたネジ先輩の目尻がほんの少し赤く染まっていて、それを視界に入れないようにしながら、慎重に言葉を選ぶ。

「テンテン…先輩と、リー先輩は、覚えて…」

「いないようだ。まあ、俺も思い出したのは中学の時だったからな。まだ分からんぞ」

「そう、ですか」

「まあ正直、どちらでも構わないんだ。俺はあの戦争の後を知らないからな」

だが、ナルトなら大丈夫だろう。と続けたネジ先輩は、すっきりとした表情をしていた。

何も言えずに黙っていると、ネジ先輩は「すまなかったな」と言って立ち上がった。

「そうだ、千歳」

「なんですか?」

「連絡先、聞いてもいいか?」

「あ、はい喜んで!」

居酒屋のような返事をしてしまい、お互いに笑った。



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