おはよーなんて声が響く朝の学校で、私は1人迷っていた。
新商品が入荷してる…!
このシリーズの美味しいんだよなあ、どうしようかなあと、素通りする予定だった自販機の前で思わず立ち止まる。
と、後ろから声をかけられた。
「お、おはよう。ケイちゃん」
「あ、おはよーヒナタちゃん。久しぶり?」
「う、うん…久しぶり、だね」
ふわっと笑ったヒナタちゃんはやはり可愛らしい。ナルトめーいい嫁さんもらったなー!
「あ、ヒナタちゃんこれ飲んだことある?」
迷っていた新商品を指すと、ヒナタちゃんは首を横に振った。
「それ、買うの?おいしそう…」
「うーん。迷ってるとこ。新商品ってさ、最初に買うの結構勇気いるよねー。やっぱ友達に感想聞いてからにしようかな…」
ぶつぶつ悩んでいると、ヒナタちゃんは両手で小さく拳を握って言った。
「じ、じゃあ、私が買おうかな!」
「お、ほんとに?チャレンジする?」
「うん。でも、飲み切れるか分からないから…ケイちゃん、ちょっと飲んでみない…?」
め、迷惑だったら…と慌てて続けるヒナタちゃんに、心が温まっていくのを感じた。
すごくかわいいです。
ありがとー!とお礼を言って飲み物を買い、教室までの道のりを二人で歩く。
校内は少しざわついていて、時間に余裕をもって登校した人たちが雑談をしていた。
はい、と差し出された飲み物を「ヒナタちゃん先に飲みなよ」と断わると、おずおずと口に含んだヒナタちゃんの頭上にはてなマークが浮かんだ。
う、うーんという声と一緒に差し出された飲み物に口をつける。
「うーん。なんだろ、これ。美味しいんだけど…」
「なんだろうこの味…美味しいんだけどね…?」
二人で顔を見合わせて笑う。今度ヒナタちゃんにコンビニの新商品でも買ってこよう。
自分達のクラス前まで雑談をしながら歩いていると、ヒナタちゃんが決心したように口を開いた。こころなしか顔が赤い。
「あっあの……ケイちゃんのクラスに…えっと、き、黄色の髪をした男の子、いる、かな…?」
「えーっと、うん。いるよ?」
うちのクラスの黄色の髪なんて、ナルトしかいない。金髪か黄色か、よくわからないところだけど。
「お、お願いがあるの…!その子の名前、教えてくれないかな…?」
「え、そんな重大そうな…多分、うずまきナルトくんのことだと思うけど…」
ナルトの名前を知らないヒナタちゃんって、どういうことだろう。
もしかして、前世云々覚えてなかったりするのかな…いや覚えてるほうがおかしいんだけど。
この前のサクラも様子がおかしかったし…うーん
内心首をかしげていると、教室内から「おいナルト!お前また遅刻する気か!」と大きな声が聞こえてきた。多分うちはくんの声だ。うちはくん朝早いからな…
「へっへっへー!今日こそは間に合うってばよーー!」
おそらく校庭のほうから響いてきているであろうかすかな声に、目の前のヒナタちゃんの顔が真っ赤に染まっていった。はいビンゴ!
にやけた頬を隠さずにわざとらしく首を傾げる。
「ヒナタちゃん、ナルトくんのこと気になるの?」
「えっいや、あの、その、」
あわあわと真っ赤な顔で慌てるヒナタちゃんの向こうに、うっすらと担任であろう人影が。
おっともうそんな時間か…これはうずまきくん遅刻だな。
「あ、ほら先生くるよ!ヒナタちゃんも戻らないと!」
「あ、うん、また…ね」
真っ赤な顔でひらひらと小さく手を振るヒナタちゃんに、「また聞かせてね」と言い残して、慌てて教室に入った。
うずまきくんは案の定遅刻して、担任の小言をくらっていた。