金曜の放課後、明日は授業もないし、どうしようかなーと、心なしか早足で昇降口に向かっていた。
家でぐうたらしようかなー読みたい本もあることだし…と階段を降りると、通りかかったネジ先輩と目があった。
「お、千歳。帰るのか?」
「そーです。ネジ先輩は部活ですか?」
「いや、今日は無くてな。演劇部の公演が近いらしくて、場所がない」
「あーなるほどー舞台ですもんね」
同意をうちながら並んで昇降口まで歩く。ちょっと時間が早いのか、人は少なかった。みんな部活なんだろうか…青春だ…
「まあ元々3人だけの部活だし、優先順位は低いからな。大会があるわけでもないし、別に構わないんだが」
「大会があったらネジ先輩無双するじゃないですか…元忍者と現代人を並べないでください…」
「お前だって元忍者だろう?」
「いや、あの、それが…えーっと…」
そういえば誤解されたままだったなあ…
うん。説明が、とても面倒です。
この世界やNARUTO世界とは別の世界で更にNARUTO世界が少年漫画として存在している世界から来ました!!ファンです!!!
なんて言っても……というか私も何言ってるか分かんないよーーー!
うーん…と考え込んでいると、ネジ先輩が小さく首を傾げた。髪がさらりと頬にかかる。そういうのちょっとキュンとくるのでやめてください!
心臓に悪いのでネジ先輩から目をそらすと、視線の先にシカマ…奈良くんが、眉根を寄せて、こちらを見ていた。
ネジ先輩と一緒のところを、見られた。
ピタリと停止した私の視線を追って、ネジ先輩が振り返る。あ、とネジ先輩が小さく言ったのが聞こえると同時に、奈良くんの目が見開いた。
あっバレましたわ。“日向ネジ”と髪型だいぶ違うのにバレましたわ。流石シカマル。いや奈良くん。
停止している私(と奈良くん)を余所に、ネジ先輩は普段と全く変わらない声色で言い放った。
「なんだ、シカマルか。元気そうだな」
「えっ!?」
思わず声が出てしまった。そうきます!?前世以来の友人にそうきます!?ネジ先輩アンタ前世若死にしてましたよね!?死に別れた同僚にそんな声掛けあります!?
ものすごく動揺してると、シカマル…奈良くんがゆっくり、たっぷりため息をついた。心情はお察しします。
ところで私帰ってもいいですかね。
「あーーーくそ、久しぶりだな。ネジ」
「今は先輩だ。まあ前も一応先輩だったんだが」
「…そういやそうだったな。んじゃネジセンパイ、千歳と仲いいんすか?」
げ。
「まあな。シカマルは同じクラスだったか」
「まあ、ハイ。ちょっと意外っすね」
「は、はは」
もうここまで来ると逃げられなそうだなあと、一歩後ろで愛想笑いをする役割に徹することにした。
やだもー奈良くんこわーい。
「意外か?まあコイツも俺らのこと知ってるからな」
「は?」
「は??ちょっとネジ先輩??何を言って…」
「木の葉の里。忍。忍界対戦」
ネジ先輩に唐突に並べられたワードに、思わず目を逸らす。と、ネジ先輩が「ほらな」と笑った。くそ、ひっかかった。
「…なあ、千歳」
「…何でしょう。奈良くん」
「この後暇か?ネジセンパイも」
マジな目をした奈良くんに、私は頷くしかなかった。
日向ネジまじ許さん