「た、たのもー…?」

景気づけに小声で呟きながら重い体育館の扉を開ける。掃除当番でちょっと遅れちゃったから、もう部活は始まってるはずなんだけど… うん。見当たらない。
広い体育館はバスケ部が半面、バドミントン部が半面使っていた。いっぱいいっぱいでネジ先輩の言う格闘技部?の活動するスペースなんて無いはず。キョロキョロと入り口付近であたりを見回していると、ネジ先輩からメールが。

『いいわすれていたが、場所は舞台だぞ』

「…は?」

舞台に目をやると、幕が降りきっていた。え、あの中なの?


そろそろと部活中の横を通らせてもらい、舞台袖に向かうと、中からドタバタと音が聞こえた。まじで中にだれかいるっぽい。こっそりと覗くと、リー先輩とテンテン先輩の戦闘が繰り広げられていた。
まってまって、この二人記憶ないんだよね?
なんで三角飛び蹴りとかしてるの?
なんでヌンチャクと体術で渡り合えるの?
あっちょっと体育館の壁は蹴ることを想定してつくられておりませんよ!!

「お、来たか」

「ちょ、ネジ先輩!あれなんです?」

「組み手だ。部員が少ないからローテーションでな」

「そういうことを聞いてるんじゃないですよー!」

小声で叫んで、記憶無いんですよね?と口パクで聞くと、ネジ先輩は小さく頷き、多分なと口を動かす。多分って…

軽く引いてると、こちらに気がついた二人が寄ってくる。こころなしか目が輝いている気がするんですけど!そんな大層な人間じゃないです!!ああでもテンテン先輩かわいいしリー先輩は濃ゆいよー!!

「は、はじめまして!1年の千歳ケイです!」

「ボクはリーです。ロック・リー。よろしくお願いしま…ちょ、テンテン!」

「そんなことよりあんた、どうやってこの堅物を落としたのよ!詳しく聞かせなさい!」

「…は?」

「はあ…落ち着け、テンテン」

ぐいっとリー先輩を押しのけて顔を近づけてきたテンテン先輩に怯むと、ネジ先輩が襟首を掴んで止めてくれた。
あ、ありがたいんですけどもTシャツ伸びちゃいそうなんでそろそろ… あ、離された。

「あ、ごめんなさい。私は天木テンよ。テンテンでいいわ」

よろしく!と差し出された手を反射的に握り返す。えっ、いやちょっとまって。

「天木…せんぱい、ですか?」

「そうよ。あ、もしかしてテンテンが本名だと思ってた?天木の天と、名前のテンでテンテン。あだ名だけど、こっちで呼んでくれると嬉しいわ」

「テンテンは昔からその呼び名でしたよね。いつからなんですか?」

「うーん、いつからだったかな…忘れちゃったけど、結構気に入ってるのよねー」

ニコニコと話す天木…テンテン先輩と、嬉しそうなリー先輩、一歩引いたところで満足気に腕を組んでいるネジ先輩を見ると、すごくしっくりきた。うん、やっぱりガイ班は揃ってたほうがいいよね!ガイ先生はいないけどさ!

「よし、自己紹介も済んだところで再開するぞ。千歳、お前はどうする?」

「どうするって…?」

首を傾げると、ネジ先輩は口元を吊り上げて言い放った。

「見学か、それとも参加するか?」

「見学でおねがいします」

そんなデッドオアアライブの選択肢、現代を生きるJKには厳しすぎますって!




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