※現代 「はぁ…」 思わず出る溜息は、本日で何回目なのか、もう数えてないから分からないくらいには、たくさん吐いている。 溜息を吐けば幸せが逃げる、なんて言うけれど、本当にその通りだなぁ、なんてぼやけた思考でそう思った。 ただいま学生でありながら、就職活動の真っ最中な訳で。今までスポーツ一筋できて俺には就職活動のしの字もなく、ただひたすらに部活に全てを費やしていた。 いや、でもこれは所詮言い訳なのだ。部活をしていても、ちゃんと就活をしてた奴はしてた。隣のクラスで仲が良く、時々俺の所属しているサッカー部にヘルプで入ってたヴァンもそうだし、更にその隣のクラスのゼルなんかももう決まったとか言ってたし。 何だよ、やってないのって、 「俺だけかよ…」 なんて、落ちた採用通知をもう一度鞄の中から取り出し、改めて見てみる。 大体何だよ、大変申し訳ありませんがって、全然申し訳なく思ってないよな、こいつら。ただの紙切れで判断しただけで、面接も何もせずに合否を決定するなんておかしいだろ。 テンプレートはっつけて苦労して書いた履歴書送りつけて、こんな楽な仕事で給料もらってる奴らは楽で良いよなっ! …なんて、これはただの僻みだ。分かってる、自分自身何をしたいかさっぱり分からないまま就活してるこら、採用する側もそれを見抜いてるってこと自体、…分かってるんスよ。 くしゃくしゃだった採用通知をもう一度くしゃくしゃに丸めて、その辺に放り投げた。もしかしたら公園の掃除のおっちゃんに怒られるかもしれない。でも今はそんなの関係なく、とにかくそんなことをしたい気分でいっぱいだった。 空を仰ぎ見れば、星が綺麗だった。ああ、泣きそうだ。ああもう、ほんと、なんて言うか…。 「…おい」 びく、と肩が跳ねる。聞き覚えのある声。振り向けば、スコールが後ろに立っていた。 同じクラスで、学年でも成績トップのクラス委員長。生徒会にも入ってて、もちろん就職も決まっててあとは卒業に備えるだけ。俺みたいな落ちこぼれの勉強の面倒も、ちゃんと見てくれる、意外と面倒見の良い、俺の憧れで大好きな委員長さまだ。 「そんなところにぼーっと立たれると迷惑だ。早く寮に戻るなら戻れ」 口調は少しきついが、それは彼の愛情のシルシ。 それがスコールの標準。何か顔を見たらますます涙腺緩みかけて、思わず場所の形振り構わずスコールに抱きつく。 「…おい」 案の定、怒ってらっしゃる。でも悪い、今は少しでも良いから甘えたい。スコールを堪能したい。 ぎゅ、と更に抱きつけば、そっとスコールが背中に手をまわす。ぽん、と優しく撫でられる感触。それにまたじわりと涙が浮かぶ。 ごめんスコール、有難う。やっぱ、スコールの存在って大きい。 口調や態度はきついけど、何だかんだで甘やかしてくれるスコールが、大好きでたまらない。 有難うスコール、でも恥ずかしいよな、ごめんな、もうちょっとで元の俺に戻るから、もう少しだけそのままでいさせて。 オンリーワン、オンリーユー 2014/10/26 |