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「あ〜〜〜〜、今日もつかれたーー」
「こら、ザックス、お風呂上がりに裸でソファに寝転がらないで!」
「そうよザックス、みっともないよ」
裸でっていうけど、別に裸じゃないぜ俺。ただ昔からの癖で風呂上がりのかっこは上半身裸ってだけじゃないか。ティファもマリンも目をつり上げておっかないったらありゃしない。
俺は仕方なく起き上がり、未だ水分を含む髪の毛を再度首にかけていたタオルでがしがしと拭きながら気怠げに返事を返す。
「ザックス、疲れてるの?」
「ん、大丈夫だよマリン」
ありがとな、と心配してくれるマリンの頭を撫でてやりながら立ち上がり、二人にお休みと言って自室へと戻る。
開けると、そこは真っ暗闇。明かりをつけることなくベッドに放置してた携帯を開いて寝転がる。開いても、誰からもメールも着信もなし。
その無反応さに、ちぇっ、と一人やさぐれる。
クラウドは今、長期配達中だ。たまに長期の仕事になる時は俺も一緒についてったりするけど、今昼間に行ってる現場の工期が迫っている為、最近は夜のバーの手伝いを休ませてもらっているほど俺も仕事が手一杯だった。疲れがこんなに残るなんて、俺も年かなーと思いながら、発信履歴から声を聞きたい一番の相手に電話をかける。
なかなか出ない。もしかしたら時間も時間だから休んでるかもしれない。でも、出てくれるんじゃないか。そう淡い期待をこめてしつこくコールを鳴らし続けていると。
『…もしもし?』
眠そうな声で、クラウドが電話に出てくれた。俺はその声ですら聞けたことが嬉しくて、自然と声が弾んだ。
「よっ。寝てたか?」
『…んん、いや、寝落ちる所だった…』
「配達オツカレサン」
『ああ。…ティファや子供たちは、変わりないか?』
「ああ。相変わらずみんな元気だよ」
『そうか…』
「俺の心配はしてくれないの?」
『アンタは心配せずとも大丈夫だろ。元々身体のつくりが違うんだから』
「ひっでぇ…それがさー、聞いてくれよ。お前が長期配達で出てから、最近おやっさんの奴人使い荒いんだって。今日も19時までみっちり残業だぜ?朝は早ぇし夜までみっちり…最近ティファに申し訳ねぇよ…」
ヤバい、話しながら欠伸が出る。電話の向こうで、クラウドがくすりと笑ったのが聞こえた。
『そうか。アンタも大変なんだな』
「そうそ、大変な訳ですよ。それに」
『それに?』
「クラウドが居ないから、寂しい」
『はいはい』
「はいはいって…あーあ、クラウドってば最近冷たいよなー…いくら俺でも拗ねちまうぞ〜」
『それはそれで可愛いな』
「可愛い言うな…!」
完全にあしらわれてるな、これは。そろそろ日付が変更する時刻だろうと思い目を凝らして暗闇の中時計を見れば、素晴らしいかな俺の体内時計。ちょうど75秒後には『明日』だった。
「クラウド」
『ん?』
「早く帰ってこいよ」
『…ああ…』
「早く帰ってきて、キスしたいし抱きしめたい」
『…俺も、』
声じゃなくて、アンタの顔が直に見たい。
「…っ、反則…」
『じゃあ、お休み』
「ああ、お休み」
静かに切れる電話音。クラウドに言われた言葉を反芻しながら、布団の中に潜った。ちら、と隣を見て人一人分の空きスペース。
それにまた切なさが胸の中に広がるが、目を閉じてこらえた。
「早く帰って来いよークラウドーマイラブー」
情けない声をあげて、俺はその日久しぶりにぐっすり寝入ることができたのだった。







忙しい時ほど焦がれるもんだ






2012/11/16


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