※現代











「…ばーか」
スコールの馬鹿。馬鹿。ハゲ。無口、無愛想。壁が友達で根暗な癖に。
ああもう、思い出すとまた涙が勝手に出てくるから困る!
「…俺も、馬鹿だ…」
がく、と立ててる膝の間に自分の顔を埋めてうなだれる。きっかけは些細なことでくだらないこと。
アレだよ、物の価値観なんて人それぞれ違って当然じゃん。
俺は俺、スコールはスコールの価値観があって当然じゃん。だからさ、俺はそれで有りだと思うし否定したつもりはないんだ。スコールが意見を言ってたことに対して気のない返事をしたのかもしれない、それがまずかったのか、スコールは馬鹿にするように何も意見を言わない俺を否定した。
そしてそのままスルーして自室にこもったのだ。何だかそれが無性に腹立たしいのと悲しいのが織り混ざって、スコールがベッドに寝ていて、その足をわざと踏んでやった。大した力を入れたつもりはないが少し痛かったらしいスコールにおもっくそ睨まれて、俺も睨み返してやって、でも後からだんだんもやもやした気持ちが溢れてきて、別の部屋に移動して。
俺は一人で、泣いていた。
八つ当たりのように踏んでしまった短絡的な行動の後悔と、いちいち真に受けないで流せば良かったのかもしれない後悔と。
それらとはまた違う、やっぱり否定されたことの悲しさと。
全部ひっくるめて、何だか涙が溢れて止まらなかった。
(ああもう、ほんと…何なんだよ…)
ケンカって、どうしてやっちまうとこんなに後悔しか残らないんだろう。もっと冷静になれれば良いのに、何でなれないんだろう。
普段はああじゃないのに、スコールも何で怒ると何も言ってくれないんだよ。全部思ったこと言ってくれって、一緒に住むようになってからあれほど口酸っぱく言ってるのに。
「うええ…っ」
泣いても仕様がない。やっちゃったもんは、仕様がないんだ。
ぐす、と鼻水を啜って、近くにあったティッシュを手探りで手繰り寄せ何枚か手に取り鼻水をかむ。泣くだけ、多分泣いた。明日、いつも通りおはようって言おう。朝ご飯作ってやって、ついでに弁当も豪華にしてやって、さっきのこと、水に流そう。
そんでまた、いつも通りの生活を送ろう。









馬鹿、でもやっぱり
(好きだから、こんなに一生懸命になれるんだ)



2012/10/23


n | b


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -