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ふと時計を見れば、既に昼の12時を回っていた。
溜まっていた伝票整理に取りかかるとすぐこれだ、と軽く溜め息を吐きながら昼ご飯をどうしょうと少し思案する。
家の中にはクラウド一人しか居ない。
子供たちはティファとザックスと一緒に買い物に出て行ってるから、殊更に閑散としている空気の中で何か食べようとはあまり思えなかった。
…しかしここで何も食べないと五月蝿く言ってくる人物が二名居ることにはたと気づき、暫し思案した後面倒だったが昼ご飯を食べることにした。
階下に降りてキッチンカウンターの端にある冷蔵庫を適当に漁ってみると、昨日夕飯で出されたラムシチューの残りと、マリンとザックスが一緒に作っていたライ麦パンがあった。
相変わらずの料理音痴なので迷わずその二つを取り出し、温めもせずカウンターの席に座ってそれを食す。
冷たいが、肉と野菜に味がよく染み込んで美味しい。温めずとも十分だと思った。
ふとカレンダーが目について、思う。
今日という特別、ともまた違った特別な日。
別に何てことはなくて、自分たちの記念日ともまた違うのだが、今日で今年度が終わる。
明日からは、また新しい年が始まる。
きっと今日の夜はご馳走になるんだろうなと思うと、その光景を予想してそれが微笑ましいと思った。
さく、とライ麦パンを一口かじり、飲み込む。
まだエッジの街は災厄から完全に立ち直ってる訳ではないけれど、確実に一歩を歩んでる。
変わることのない中で、でも何かが変わっていく毎日、日常。
目を細めて、食べ終わった食器をシンクに下げて、水をかけて食器に溜まった水溜まりを見つめる。
この生活を始めてから、いつからかこんな風に汚れは出てこなくなったように思える。
それはきっと、一緒に居てくれる家族のおかげと、もう一つは。
自分を慈しみ、愛してくれる、半身であるあの男のおかげ。



いつも押し潰されそうになった過去は、もう、過去のことだと割り切れるようになった。
今は今在る幸せをちゃんと掴み、それを未来に繋げていきたいと、はっきり思っている自分が居る。



ぎゅ、と右手を握りしめて、自室へ戻り作業の続きをしようと思ったら、車のエンジン音が聞こえた。
どうやら帰ってきたらしい。
目が自然と弛むのを感じて、玄関まで出迎えてやる。
子供たちがそれぞれ手荷物を持ち、勢い良く入ってくる。
ティファも両手に抱えて、ただいま、と笑顔で言ってくれた。
最後に、車のキーを指に持ちながら、ティファよりも更に手荷物を両手で抱えた男が、
「ただいま。飯今から作るからさ、一緒に食おうぜ」
と、やはり笑顔で言う。
先ほど胃に収めたラムシチューが既に重い気がするのは気のせいにして、頷いて彼らを迎えた玄関のドアを閉める。
一気に賑わうリビングに立ち込める人の匂いと気配。
(嗚呼…温かい…)
ほっとする瞬間。
愛しいと思う、胸の奥底から湧いてくるこれこそが、心の湯なのかもしれない。
子供たちの相手をしながら、出来上がるであろう食事を待つ。
ふと感じるこの瞬間を、何年経っても大事にしたいと、強く思った。








ふと思うこと



2012/03/31


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