※7の世界に10が来ちゃったよパロ。











「眠れないのか?」
夜も遅い時間。明日の配達先の荷物を整理し終わって一区切りついた所で、窓から人影が見えた。月の青白い明かりを帯びてぼーっとしていたティーダが、俺の呼びかけに応えるように振り返る。
つい最近、異世界で共に闘った仲間の一人だ。
だが元の世界に帰る際に何故か迷子になって、俺の世界へ誤って来てしまったらしい。
神様の気まぐれはこれきりにしてほしいものだ、と思いながらも、とりあえず行く宛もないだろうからティファに事情を説明し家に置いている。
「何か、眠れなくて…」
そう言いながら、ティーダが苦笑した。まぁ、やっと元の世界に帰れると思いきやまた違う世界に。そう考えれば、眠れないのは当然だろう。
「恋しいか…?」
「え…?」
「元の世界が」
「そりゃあ、ねぇ…」
「そうだな。愚問だったな」
「何か、似てるんスよね…」
「何が?」
「クラウドたちが居る、この世界が、俺の居る世界と、」
ちょっと、似てる。
小さく、小さく、ティーダが呟く。
「何だっけ、ライフなんちゃらってあれが、」
「ライフストリーム」
「そうそうそれ!それが、俺の世界で云う幻光虫みたいだったりとか…シンラって名前の会社があったりとか…」
あ、でもシンラは人の名前だな…とぶつくさ一人で言っている。語りかけたり呟いたり騒がしい奴だ。
何かさ、とまたティーダが俺に語りかける。
「あの淡い色の光見てると、胸の奥が締めつけられるんスよね。きゅーって。んで、早く帰らなきゃ、って…」
だが、肝心の帰り道が解らない。そもそも来方だってコスモスの気まぐれで来たようなもので、来方が判らないのに帰り方なぞもっと判る訳がなかった。だが、俺がティーダの立場だったら、きっと同じことを思うのだろう。
信じて待ってくれている仲間が居る。それだけが、異世界に居ても自分が自分で居られる理由で、意義になる。横に居る不安げなティーダの頭をぽん、と撫でてやる。
すると不思議そうに、ティーダが俺を見た。こうして見ると俺の方が僅かに身長が下なので、年上なのに少し悔しい。
青空色の瞳がぱちくりと瞬きをし、そして不満げに眉がつい、とつり上がった。
「…何スか、これ?」
「慰めてるんだが、不服か?」
「…俺、ガキじゃないんスけど」
「そうか」
「……」
「……」
その割に、手を振り払う気配はない。内心、嫌ではないのだろう。
「帰らないと。あの子が、俺を待ってるんだ…」
「…そうだな……」
青白く光る月をどこか睨むように、ティーダが真っ直ぐに月を見る。やり方なんか判らないが、俺も一緒に、祈る。





どうか、今度こそティーダが元の世界に帰れますように。
どうか、今度こそ、ティーダの想いが『あの子』に届きますように。





こんな時に運び屋の癖に何もしてやれないのが、酷く歯痒いと思った。





どうか、どうか。



2012/07/10


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