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ぽす、と半身に重みを感じて目を開けてみれば、そこには愛しい恋人が居た。
髪の毛は中途半端に濡れたまま。また乾かすの面倒になったんだな、と苦笑しながら少し冷えた肩を抱き寄せてやれば、猫のように素直にすり寄ってきた。

そんな態が可愛く思えて、一緒に潜る為に布団をかけ直してやったりして。


半分から伝ってくる温もりや重みが愛しくて、また胸の奥から熱くなる。飽きることなく少し濡れた髪の毛を撫でれば、クラウドはぼそりと呟いた。
「…生きるって、大変だな」
「…ん?」
また突拍子もないことを云うもんだから、調子が狂いそうになる。が、もう慣れたもので冷静に聞き返す。
「今日、コレルの方まで配達に行って…そこには老人が独りで住んでいて…。奥さんに先立たれて、生きる希望が見いだせないまま、それでもメテオの災厄を逃れて今でも生きてて…。俺に同じことを、何度も何度も、壊れた古時計のように話すんだ…」
「うん」
それで、と続きを促せば、クラウドは更に俺の胸元に顔を擦り付けながら続ける。
「その老人の家には…何度か配達に行ってるんだけど…、そのたびに同じ話をされるんだ…。今日なんて、5回ぐらい聞かされた…でも、その老人は、決まって最後は俺の手を握りながら、」






『ありがとう。いつもいつも、ありがとう…』






「しわくちゃな顔で、手で…そう言ってくるんだ…」
「へぇ…」
「何の為のありがとうなのか、俺に対してのありがとうじゃないかもしれないけど、正直何度も同じ話をされてうんざりだけど…でもそんなことされたら、文句なんか言えない…」
「はは、確かにな…」
髪の毛にキスを送りながら、ぎゅ、と抱き寄せる。クラウドが息を大きく吸い込んで、ゆっくり吐いた。俺も同じように、吸って吐いた。
「…俺は、」
「ん…?」
「…時々、良いのかなって思ってしまうのに」
「………」
「誰かにそんな言葉を言って貰える資格なんか、な「クラウド」
有無も言わさず、強く強く抱き締める。ほんとこいつ馬鹿だ。ネガティブにも程がある。ほんと馬鹿だ。英雄だけど馬鹿だ。
「そんなことねぇの」
代わりに、ぎゅ、と片手を絡めてやる。そこから伝う熱も、愛しい。
瞼にキスをすれば、蒼碧の瞳が少し潤んだ。疲れてるから弱音吐いたんだろうな。こういう時にしか甘えられないなんて、不器用な所も愛しいな。
不安なら、何度だって言ってやるよ。お前が納得するまで、いくらでも。
だから、そのたびに、こうして手を握るから。






手をにぎって



2012/01/25


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