※現代、三人は幼なじみで兄弟みたいなかんじ。











年が明けても、昔ほどめでたいと思わなくなった。
「お前も老けたな」
「…それ、クラウドに言われちゃおしまいな気がするっス」
茹で上がった年越しそばをテーブルに並べるクラウドが言った言葉に対して、俺も見終わった紅白のチャンネルを切り替えながら返してやる。
だいたいクラウドは俺やスコールとそんな年が違わないのに妙にじじくさい。そんなこと口に出しては言えないが。
しかしスコールもスコールで、クラウドと同じくらい無表情なものだから、俺一人馬鹿みたいにうかれんのも正直疲れてきたっつーか、何つーか。
「…何だ?」
「ん、べっつにー?」
「いただきます」
クラウドが椅子に座って、元々座ってた俺とスコールもクラウドに倣うように手を合わせ、蕎麦を啜った。
熱々の蕎麦は正直火傷しそうだが、更に正直に言えば特別美味くもない。
「食い終わったら、初詣でも行くか」
(人混みが嫌いな癖によくそれだけは毎年懲りずに行くな…)
「スコール、毎年のことだ。諦めろ」
そんな彼らの会話を聞きながら、トッピングされた鶏肉を最後に汁と一緒に飲みながら思う。
「ごちそうさまっス〜」
もうスコールとクラウドと一緒に暮らすようになってから何年経ったか解らない。でも気付いた時から一緒で、みんなの両親が早い内から行方不明になったり他界したりして、利害の一致ってやつで現在こうしてたりする。人生何があるか解らないな、と当時クラウドはやっぱり無表情にぼやいていたのを聞いた記憶があるが今になって考えてみれば、その言葉は今はプラスになってるのではないかと俺は思う。
キッチンの流しに食べた分は自分で片付けるとか、ゴミは当番制とか、調理・金銭管理は年長であるクラウドの仕事、とか。ご飯は三人揃ってから食べる、とか。
三人で暮らすようになってから、むさ苦しいと感じても寂しいと感じたことは一度もない。
狭いアパートで、スコールと俺なんか同じ部屋だからプライベートもクソもあったもんじゃないし、彼女が居ても家に連れ込めない。
でも、この家は、どこかあったかい。
喩えクラウドの作る飯がそんなに美味くなくとも、そう思えるって、最高の贅沢かもしれない。
コートをクローゼットの中から取り出して、靴を履いて玄関を開ける。
冷たい風がひんやり頬を撫でてきたと思ったら、雪が降っていて。
後ろからスコールが仏頂面で俺の首にマフラーを巻いてきて。
「…寒いのが苦手な癖に薄着をするな」
と、怒られた。
ゴーン、と金の音が聞こえる。俺は二人に向き直って、今年もよろしくっス、と言った。
そうしたら二人も、こちらこそ、と言った。
多分あれだ。年が明けてもめでたいと思わなくなったのは、当たり前の幸せがすぐそこに在って、それに感謝し合ってるからとか、我ながらくさいことを考えるなぁと思いながら、良い年した野郎が三人並んで神社に向かって歩いて行った。







ことしもよろしく?





2012/01/07


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