※AC本編寄り設定、C視点。











「えー、オホン」
いざとなると結構緊張するもんだな。
彼はそんな風にごちて頭の後ろを掻いている。空は晴天、花は満開。
彼の後ろには、世界一可愛くて綺麗な花嫁さんである彼女が、彼の言葉を今か今かと待っている。
翡翠の丸い目はいつだって輝いていて、それは純度の高いエメラルドのようで。
そんな彼女の眼差しと想いに応えるべく、黒髪の彼は彼女の方へと振り向いた。そして手を伸ばす。
彼女はそれを、無言で受け取る。
「えー…汝、悩める時も、健やかなる時も、ここにいる世界一な男前でソルジャークラス1st.のザックス・フェアを夫として愛し、守っていくことを誓いますか?」
彼らしい言葉だ。俺はそのあまりに砕けた言葉を聞きながら苦笑して、けれども彼女も同じ思いだったのか、やはりカラカラと笑いながら
「何、それ?」
と返す。彼は良いんだよ、と悪戯っ子のように笑みを浮かべて彼女に同意を求めた。
「んー、どうしよう、かな」
彼女らしい回答だ。わざと焦らして、でも最後は、縦に頷くに決まっている。
「嘘。誓います」
「うっし!」
こんな時もガッツポーズなぞせずとも解るだろうに、だから子犬なんだ、と内心突っ込まずにはいられない。すると今度は彼女の方がはい、と手を挙げてにこり、と笑む。
「汝、悩める時も、健やかなる時も、スラム一の花売りの美少女エアリス・ゲインズブールを妻として生涯愛し、守り抜くことを誓いますか?」
「もちろん!一生誓う!」
「嬉しい。即答、だね」
ふふ、と彼女が笑いながら彼の手を握る。そろそろ良いか、と思い、俺は離れていた所から歩みを進め、片手に持っていたとある荷物を二人に届けるべくゆっくり近付いて行く。
「二人とも、」
「おう、配達ご苦労さん」
「久しぶり、だね」
「ああ」
そうだな、と何故かそう云われたこともその呼びかけに自然と頷いたことも疑問に思いながらもとにかく二人宛ての荷物にかけられていたシルクの布をしゅるりと外し、彼へと差し出す。
彼女の目がみるみる内に大きく見開いて行く。翡翠の目が潤んだ。そして彼女は彼を見る。無言で頷く彼は、赤いケースに納められていた指輪の一つを手に取り、彼女の手を握る。
「…では、此処に夫婦として成立した証に、指輪の交換を」
「了解」
我ながらでしゃばった真似をしたものだと思いながらもぱち、と彼の方からウィンクをされた。これで良かったらしい。
彼女の白く細い指にシルバーのリングがはめられた。そして同じように彼の指にも、彼女の方からリングをはめてやる。
「それでは、誓いのキスを…俺は見ていないから、後は二人でやってくれ」
何だか少し恥ずかしくなってきて投げやりにそう言うと、彼は思いっきり顔をしかめる。
「オイオイ、牧師役なんだからちゃんと見ててくれよな?」
第一クラウド以外誰も居ないんだから問題ないだろ?と言われるも、逆に俺しか居ないから恥ずかしいのだとどうして子犬は気づかないのか。
そんな俺たちのやりとりに、彼女はまたカラカラと笑う。うっすら目尻に涙を浮かべて。
それがまた綺麗だと思った。
「クラウド、」
「ん?」
「ありがとう、すごい、嬉しい」
「…ああ」
「ありがとな、クラウド」
「…そんなこと、ないさ」
一歩離れ、また一歩離れる。教会の壊れた屋根の隙間から入る光が、更に光を増した。
鳴らない筈の鐘の音が、どこかで聞こえる気がする。そうして二人は互いに抱き締め合う。その存在を確かめ合うように、鼓動と呼吸を共有するかのように。
そうして唇が重なった。
また鐘の音が聞こえた。
風が吹いた。
花びらが待って、光が更に差し込んだ。
穏やかで優しい時間。
そんな空気がずっと続けば良いのに。























そんな夢を、視ていたような気がした。























「クラウド?」
「…………」
朝。目を開ければ、心配そうに眺めていたらしいデンゼルとマリンが、視界に入ってきた。
起き上がり、二人の頭を順に撫でてやる。
「クラウド、どこか痛いの?薬、貰ってこようか?」
「いや、大丈夫だ。大丈夫…」
嗚呼、全く。あんな風な夢を観るなんて、反則だ。
本当に二人は狡い。また引きずられそうになる。俺もそっちに行きたいと、思ってしまう。
鼻を擦って、二人のことをぎゅ、と抱き締めてやる。
「何でもない。さっさと支度して下に降りるから、ティファの手伝いしながら待っててくれ」
「うん!」
「わかった。マリン、行こう」
そうして子供たちを部屋から見送り、起き上がって窓の外を見る。今日も晴天、焦がれている青空が綺麗だ。
きっと今頃、幸せに暮らしてるんだろうなと思う。俺も今は、それなりに幸せに暮らしてるつもりだ。
胸の奥にはまだ甘く切ない想いが残っているけれど、大丈夫、きっともう、後悔はしない。
前へ進むよ。アンタ達が残してくれた世界と命を、俺は生涯を賭して守っていくから。
だから、見守って、笑っててくれ。



















向日葵の笑顔

(あなた達が、俺の希望)




*ZAガチ結婚本当におめでとう!



2011/08/20


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