06

「雪乃さん?」


仕事帰り、スーパーで買い物をしていたら名前を呼ばれた。振り返ると同じく仕事帰りらしい岩ちゃん。すぐに私が持っていた籠を手に取って持ってくれる。


「持ちますよ。」

「ありがとう。岩ちゃん今日何食べたい?」

「んー。」


小さく考えてから岩ちゃんは真っ直ぐに私を見て笑うと「肉。」そう答えた。まるで自分が肉食だとでも言うかのように。


「やっぱり牛?あ、すき焼きにしよっか。隆二も好きだし!」

「やったね。」

「食後のデザートはアイスだよね?」

「はは、雪乃さんってアイス好きだよね?絶対常備してません?」

「え、普通じゃないの?食べたい時になかったら悲しいからねぇ。」

「女だなぁーなんか。当たり前ですけど。なんか可愛い。」


さり気なく繰り出される岩ちゃんの言うそーいう言葉に内心毎回ドキッとしていたなんて。勿論隆二に言われることも多いけど、隆二以外の誰かに言われる言葉は重たく感じる。そんな気がなかったとしても、そうなんじゃないか?って思ってみたく、なる。


「岩ちゃんこそ、女の子のお客さん多いでしょ?」

「んーまぁ、普通に。」

「今度お店行ってもいい?」


私が聞くとちょっとだけ考えてからニッコリ微笑んで「もちろん!」そう答えた。

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