「岩ちゃん今日から新しい子入るから、面倒みてあげて。」
朝一臣さんにそう言われた。
「わかりました。どんな人ですか?」
「女、女。悪い俺、ちょっと用事あって出てくる。昼には戻るからさ?」
「はい、いってらっしゃい。」
平日の昼間なんていくら有名ショップとはいえ客なんてほとんど来ない。研修するならちょうどいいやってポケットにスマホを忍ばせて雪乃とLINEのやり取りをしながら過ごしていた。
「あのぉ…。」
「あ、いらっしゃいませ。」
レジ前で椅子に座っていた俺に話しかけてきたのはショートの女で。
「なにかお探しですか?」
「いえ、今日からお世話になる…
「あああ、バイトね。俺岩田。よろしくね?」
スッと手を差し出すと彼女は照れくさそうに微笑んで自己紹介をした。
なんでも隆二さんの紹介だとか。ほんとあの人どんだけお人よしなんだろ。困ってる人がいたら100%拾っちゃうのはいいけど俺には絶対に真似できない。彼女、咲良ちゃんは二十歳のフリーターだった。彼女の兄貴と隆二さんが知り合いで仕事を紹介したとか。
「慣れれば簡単だから。」
「はい。頑張ります。」
意気込んでるけど、客来ないよー。なんて思ったものの、雪乃からのLINEで咲良のことなんてすっかり頭から抜けていた。
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