飲み友


その日から私の飲み友が一人増えたんだ。隆二になにを吹き込まれたのか、週の半分を壱馬くんとご飯に行く様になっていた。


「外食ばっかじゃキツくない?もうさ、家飲みにしてうちで食べようよ?」


別にそこらの安いチェーン店でいいって言ってるのに、私と二人の時は壱馬くんは絶対にお洒落なお店を選んできてくれて、尚且つお代も払わせてくれない。いくらなんでもこれじゃあ可哀相すぎると思ってそう提案すると、思いの外吃驚したのか、壱馬くんがゲホゲホとむせ込んだ。


「わ、大丈夫!?」


背中を摩ると真っ赤な顔してこちらを見る。コトっとグラスを置いてまじまじと私を見る壱馬くんは、今日も臣ちゃんを演出している。遠目で見たらそっくりだ。


「僕はいいですけど、(名前)さんの家にあがっても大丈夫なんですか?」
「え、大丈夫だよ。」


煮え切らないって顔で壱馬くんが小さく息を吐き出すと、改まって私を見た。


「彼氏とか、いますよね?」


思わずキョトンと見返して、ああなるほど!って納得。その心配してくれてたんだ壱馬くんってば。ふは、良い子だなぁほんと。私は首を振って「いないから。」そう言うと壱馬くんがほんの少し切なげに言ったんだ。


「馬鹿な男が多いんですね、(名前)さんの周りは。」
「え?馬鹿な男?」


聞き返した私にふわりと優しく微笑んだ壱馬くんは「なんでもないっすよ。」小さくデコピンをされた。


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「なんか機嫌いいね、最近。」


肩にポンっと乗っかる臣ちゃんの手。耳元でそう言われて思い浮かべる壱馬くんの顔。いやいや、なぜ君が浮かぶんだよ!って内心自分で突っ込みを入れつつも、「そうかな〜?」って返す。そんな臣ちゃんは見るからに不機嫌で。


「…女って面倒くせぇな、やっぱ。」
「…え?」


また彼女とうまくいってないの?そう聞く前に言ったんだ。


「俺やっぱ(名前)と付き合おっかな〜!ね?」


ど至近距離でそう言われて、心臓が跳ね上がったなんて。

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