笑顔に繋がる温もり
翌朝目が覚めたら雲ひとつない快晴だった。なんとなく身体に壱馬くんの温もりが残っているようで、ちょっとだけ顔が緩む。それにしても、隆二以外にバレるなんて。昨日臣ちゃんとキスして抱かれる前に帰されたことよりも、壱馬くん達とナインボールをした事が私の中に残っているような気がした。早速LINEを開けて壱馬くんにメッセージを送る。
【壱馬くんおはよう!昨日は色々ありがとう。ご迷惑かけちゃってごめんね。もしよかったら今夜御礼に御飯どうかな?】
【(名前)さんおはよ!今(名前)さんにLINEしようとしててん。迷惑?なんのことやー。なんかあったら俺が守ってあげんで!(笑)それよか飯食いたい!今日現場近いから大丈夫やと思う。お願いします!】
すぐに既読になったことがなんだか嬉しくてくすぐったい。壱馬くんもLINEしようとしてくれてたんだって、たったそれだけの事が私の笑顔に繋がっているなんて思いもしない。
「おはようございます!」
事務所のドアを開けてフロアに入るとすでに隆二が珈琲を飲んでいた。
「昨日、なんかあった?」
そう言われてキョトンとする。だけど思い出した。臣ちゃんのマンションから出た時に隆二に電話をしたことを。
「あーうん。」
「店から出たら着信入ってたんだけど、時間遅くて。家に行こうともしたんだけど…。」
スっと目の下を指で触られて。え?
「泣いた?」
小さく隆二の声が届く。心配かけちゃったよね、私ってば。目も腫れないようにって冷やしたけど、隆二には何も隠せない。
「あの、また話すから。でもね、本当に今日は大丈夫で、」
その時だった。「おはようございます!」元気よく聞こえた声に胸がトクッとなったのは。前髪全開の壱馬くんが私を見てニッコリ微笑んだ。
「(名前)さん、おはようございます。」
「壱馬くん、おはよ。」
微笑んだ後、ハッとして隆二に「隆二さん、おはようございます。」頭を下げた。それを見て眉間にシワを寄せる隆二。
「お前なぁ。女しか目に入ってないわけ?俺、ついでっぽかったけど?」
「いや、そんなんじゃ!すいません。」
「(名前)しか見えてないのか?壱馬の目は。たく。」
ポカッて隆二の痛くないだろう鉄拳をくらってペコペコ頭を下げる壱馬くんに隠れて笑った。「僕着替えてきますね。」逃げるようにロッカーに行った壱馬くんは、着替え終わると給湯室で珈琲をいれていた私の腕をポンと叩く。
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