スタッフ鑑賞
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夕方、研修を終えた御一行と直人さんと啓司さんが一緒にオフィスにやってきた。ちょうど彼らのタイムカードを作成していて、名前はなんとなく覚えた。
「あ、翔ちゃん!」
「え!」
「はい、翔ちゃん。制服とタイムカード。」
「あ、ありがとうございます!」
「わたしオフィスだけどボックスも見てるのでよろしくね!」
「はい、お願いします。」
ニコっと微笑む岩谷の翔ちゃんは短髪でめっちゃ可愛い。
笑うとフニャって目が細くなって癒されるけど、真顔は綺麗で見とれそうだなぁ〜なんて思う。
「気に入られちゃったなぁ。」
直人さんが翔ちゃんにボソっと言うと、照れたように目を細めて微笑む翔ちゃん。
「映画見るのにサイン貰いたかったらゆきみに貰えるから、みんな。」
「え、僕見たいです。」
「お、見る?」
「はい。」
そう言ったのは、制服合わせのイケメンで。猫みたいにジッとわたしを見つめるから思わず目を逸らした。
「え、じゃあ教えます、わたし。えっと…ごめん名前、」
「藤原です。」
「藤原くんね。こっち来て。」
「はい。」
支配人デスクの横にある引出を開けて紙を渡す。
「ここに入ってるからすきに取ってここにセクションと名前を書くの。あと作品名と時間も。それで自分のシフト表を持って×の日は見れません。それ以外の日で、動員数が半分以下ならいつでも見れるので、マネージャーかセクションリーダーにハンコを貰って、自由席の時はそのままフロア入口でこの紙を見せて好きな所に座ってね。指定の時はボックスに並んで指定席の半券を貰ってこの紙と一緒にフロア入口のスタッフに見せて中に入ってください。見終わったら感想を書いて、この引出に戻して、おしまい。通じた?」
「はい。今書いていいですか?」
「あ、うん。はいペン。」
「借ります。」
サラサラと文字を書いてく藤原くん。
「字、綺麗だね。」
「そう、ですか?」
「うん。見やすい。」
「ども。ハンコ、ください。」
「あ、うん。ハイ…。」
「…一ノ瀬さん、ありがとうございます。」
「いえこちらこそ。」
って、何言ってんだよ、おい。
完全にイケメンのペースに流されてるよ〜って思いながらもこの人、かっこいいなぁ…なんて軽く思っていたんだ。
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