爽やかな青山くん
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一週間もたてば、各セクションの新人研修も始まって、あっという間に馴染んでいくということを知った。
意気揚々と研修を行う朝海ちゃんと大樹ちゃん。プラス、トサカの三人でフロアのイケメン藤原くんと、吉野くんと、川村くんをマンツーで教え込んでいた。
コンセでは健ちゃんが青山くんと陣くんと鈴木くんの三人を纏めて研修していて。
はたまたプロジェクションでは隆二くんが神谷くんと山本くんを、マイコが長谷川くんを研修していたんだ。
うちは、パートリーダーのハルカが翔ちゃんにつきっきりで研修している。
この土日を乗り切ればみんな来週からはいい働きっぷりをするだろうって、毎度動員数の高い土日にフルで働かせるのがうちの劇場のやり方だった。
お昼休憩で新人くん達が揃いに揃ってバテているのかと思いきやみんな根性だけはあるみたいで、まだ足りないって顔をしている。
いや、一人を除いて。
「吉野くん、大丈夫?」
ご飯も食べずにスタッフルームの机にへばりついているフロアのイケメン吉野北人に話しかけると顔をあげた。
その距離が思いの外近くてうお!って後ろに後ずさると、そこにいたであろうコンセの青山くんがふわりと受け止めてくれた。
「わ、ごめんね、」
「いえ。一ノ瀬さんが無事で何よりです!」
わわ、爽やかだなぁ、青山陸。
だからつい口が勝手に動いちゃったわけで。
「青山くんは、彼女いるの?」
「え、僕ですか?」
しまった。聞いといてなんだけど、やべえなこの質問。だって吉野くんも目をまんまるくして見ているし。
「あ、ごめん今の嘘。」
「えっ!?」
「へえ、ゆきみこーいうのがタイプ?」
「………。」
出たなトサカ。
わたしに興味なんてないくせにこーいうところだけ拾うんだ。
「別に違うわよ。」
「朝海が選別してるよ、ゆきみの相手。」
「登坂くんにも言ってるの、朝海ちゃんてば。」
「なんでも喋るよアイツ。キスでもしてやれば!」
くくくって嘘か本当か分からないことを言われて苦笑い。
「と、にかく!青山くんあまりに爽やかだったからつい聞いちゃっただけだから!それから吉野くん、無理しないでキツかったらこの登坂くんにちゃんと言うこと!分かった?」
相手の返事もろくに聞かずにスタッフルームから出た。なんか、調子狂う。
「だ―――!!腹立つ!」
その場で足踏みしていると新人を引き連れたマイコがスタッフルームの方へとやって来た。
「あ、ゆきみさーん!クレープ食べに行きましょうよ?もークタクタ。炭酸水とクレープ食べたい!」
「…よし、奢ってやる!」
「わーい!ゆきみさん大好き!」
「YOUも行く?」
マイコの後ろにいる銀髪のキノコカットな長谷川くんに聞くと「いえ僕はいいです。ごゆっくり。あ、中沢さん、ご指導ありがとうございました。」丁寧に頭を下げた。
なに長谷川!ちょう感じいいじゃん!
「ふふ、長谷川くん、素質あると思う。午後も頑張ろうね?」
「はい!お願いします。」
やんわり手を振るマイコは、わたしを見てニッコリ。
「ゆきみさんの相手、朝海ちゃんに聞いちゃった!」
へへへって笑うけど、わたし何も聞いてないんだけど!
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