女は可愛さ重視
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前半の研修が終わると哲也さんが一服しに戻ってきた。後半は、直人さんと啓司さんで研修らしいけど、このB型コンビ大丈夫かなぁ?
絶対無駄に遊ぶよね。
「哲也さん、そんなにイケメン揃いでした?わたしまだちゃんと顔見れてなくてー。」
「噂になってる?」
「なってます、だって朝海ちゃん情報だもん。」
「朝海かー。そりゃ仕方ねぇな。まぁそこそこじゃん?接客業には向いてるよアイツらみんな。」
「じゃあやっぱり哲也さんが顔で書類選考したの?」
「俺と啓司。顔は大事だからね、顔は!」
ニコッて微笑む哲也さんはかっこいい。今でさえこんだけ美しいんだから、哲也さんが学生の時なんてそうとうモテたんだろうなーなんて地味に思う。
「女も、顔ですか?」
ふと思ってそう聞くと一瞬ぐるりと眼球を回してからこちらを見つめた哲也さん。
「女は可愛さじゃない?」
可愛さ?可愛さの欠片も持ってない女はどーすんの?
思わず眉間にシワを寄せるわたしを見て哲也さんが笑う。
「ゆきみちゃんの可愛さは、直人がよーく分かってるんじゃないの?」
煙草を灰皿で潰して珈琲を飲み干すと哲也さんは午後のマネージャー業務に戻っていく。
ポツンと残されたわたしに、内線がかかってくる。
「はい、スタッフルーム一ノ瀬です。」
【あ、いたいた。ゆきみそのままそこにいて。今から研修ビデオ見せるから、制服合わせも一緒にやっちゃって。】
「分かりました。」
タイミングよく直人さんからの内線に哲也さんのせいで無駄にドキドキしたんだ。
内線から数分、コンコンってスタッフルームをノックする音に慌てて扉を開けた。
「わ、なんだ、健ちゃんかぁ!」
「なんだ、ちゃうよー。健ちゃんやでぇ、俺じゃあかんのん?」
「いや今から新人くん達の研修ビデオだから待ってたの。」
「あーそうか!今日やったなぁ!うちも3人もろてなぁ、ほんま助かるわ。」
飲食販売のコンセッションのセクションリーダーの山下健二郎くんは、関西出身でめちゃくちゃ人懐っこい人で、みんなに分け隔てなく話すいわゆるうちの映画館の兄貴的存在だった。
「3人も?なんでうちが1人だけなのよー。ちきしょー。」
「はは、ええやん。長期に誘導してボックスも研修させたら!」
「もー肝心なのはクリスマスだよ!三連休出てもらわないと雇った意味無し!」
思わず熱く声を荒らげた瞬間、ドアが開いて直人さんが御一行を引き連れて入ってきた。
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