誘惑のシフト希望表 

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休憩を終えてオフィスに戻るとマネージャーがデスクを囲んでいた。そこにあるのは今ほど朝海ちゃんが言っていたであろうイケメンズのシフト希望表。


「あ、ゆきみいたいた、こっちきて。」


直人さんに呼ばれてそこに行くわたしの腕を掴んで自分の前に出した。


「わ、欲しい!この子、えっと、藤原樹!これちょうだい、うちに!」


12月分のシフト希望表で、クリスマス三連休空いてるのなんて珍しい!大学生なのに。


「えー私この子がいい、長谷川慎。夜出てもらえないとうちは困るからなぁ!」


プロジェクションというフィルムを編集して映写機にかける特殊なセクションのリーダーマイコが彼のシフト希望表を指差している。


「ストーップ!よく考えて、フロアのシフト最悪だろー。藤原樹は俺が貰う。この二人も!」


でたトサカ。いつからいた?どっから湧いてきた?思わずジロっと睨むとニッコリ微笑まれた。ムカつく。


「じゃあこれ!岩谷の翔ちゃん!この子でいい!これは絶対うちに入れる、直人さぁん、お願い!ね?ね?」

「ゆきみに言われちゃなぁ。岩谷くんはうちで貰おうか!」

「やった、やった!」


直人さんの腕に絡みついて飛び跳ねた。

そうやって冬休み要因である学生バイトを入れたことで、わたしのクリスマスが変わってくるなんて、思いもしない…。


各セクションにそれぞれ数人の新人が入った。

今日はまとめてマネージャー研修の日で、オフィスのセクションリーダーであるわたしは制服のサイズ合わせをするように言われている。

相変わらずの切ないシフト希望表でシフト作成をしていた。

フロア入口のトサカからバイトくん達がきたっていうお知らせが届いて研修担当の哲也さんが出て行った。


「えみはまだ見てないんだよね?」

「そー私ちょうど休みの日だったから。」


ボックスの休憩回しのために、わたしもヘルプでチケット売り場に入っていた。ちょうど映画が始まった後だからコリドールには人がまばらにいるだけで。

入口に集まっている学生達を遠目で見るけどさすがに顔までは見えなくて。


「イケメン揃いだって!どーする?岩ちゃんに怒られないように遊んじゃう?」


マネージャー試験を受けるために、現在全セクションを回っている岩ちゃんと付き合っているえみに冗談で言うとクスっと笑った。


「ゆきみってば気に入った子いたの?」

「それが、まだ。朝海ちゃんはすっごい騒いでた。あの朝海ちゃんですらビビった!って。だから書類選考顔で選んだんじゃないか?って言ってたの!」

「ぶっ、朝海ちゃんが?それは期待できるわね!」


シネマストアの前のB階段を登って上の会議室へ直行する哲也さん達御一行に小さく手を振ったんだ。


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