恋する相手!
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「ゆきみさん、見ました?さっきの新人!」
「へ?新人?」
休憩時間、スタッフルームで紅茶を買った私を追いかけてきたフロアのバイトリーダーの朝海ちゃん。
私に続いてここにしか売っていないハニーラテを買って隣に座る。
「そうです、冬休みのバイトくん達、エラいイケメン揃いですけど、書類選考したのって誰ですかね?」
「イケメン揃い?あ、さっきの直人さん、バイトの面接だった感じ?」
「そうですよぉ!あたしビビりましたもん。揃いに揃ってイケメン揃いで、ひっくり返りそうでした!はぁーフロア入らないかなぁ、あの子達。」
「え、ずるい!ボックスにちょーだいよ!シフト全然埋まってないのよぉ。」
「いやうちも埋まってないって臣ちゃんパイセンが言ってました!」
フロアのセクションリーダーの登坂広臣はこの世の美を独り占めしたような奴で、あまりに顔が綺麗すぎて少々苦手。
なるべく関わらないようにしているものの。
「朝海ちゃんは、トサカ狙い?」
「ふは、ゆきみさんって、臣ちゃんパイセンがいない所では強気ですよね、トサカ呼び。それあたし好きっす!でもあたし、顔は岩ちゃんパイセンが好きー!でも、付き合うなら大人の男がいいっす。」
見るからに恋多き女に見える朝海ちゃんは、聞くところによると百発百中って噂で。
可愛らしい顔しているわりに性格はサバサバしていて、男と混ざっていても何の違和感もなかった。
お気に入りは、コンセッションのバイトリーダー亜嵐くんと、フロアのパート大樹ちゃんって公言している。
だけど実際の所、朝海ちゃんは誰に対しても本気モードには見えなくて、適当に遊んでいるっていう言い方はちょっと誤解を招くけど、たぶんそれが正しい気がする。
「大人の男って、えー誰だろ、隆二くんとか?」
「いや、あんまし。」
「あ、マネージャー?直人さん?」
「直人さんは大人の男って枠に入ってません。」
「じゃあ、哲也さん?でも、彼女いるからなぁ、哲也さんは。えー誰だろー。」
「てかゆきみさん!うちのスタッフ内で決めないでくださいよ!」
まぁ確かにそうだ。でも、出会う男なんてここにしかいないんだもん。
「もーすぐクリスマスなのになぁ。わたしだって素敵なクリスマス過ごしたい、」
なんて今まで口にしたことなかった台詞。
だからか、朝海ちゃんが目をランランとさせてニッコリ微笑んだ。
嫌な予感。
「あたしが見つけてきてあげます、ゆきみさんの恋する相手!」
すっごい面白いもの見つけた!って顔して朝海ちゃんはわたしよりも10分早く休憩を終えた。
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