恋の始まり@
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「わかるでしょ、俺、したことないの…。だから…―――だ、め?」
途切れ途切れに、でもしっかりと強く樹が真剣に気持ちをぶつけてくる。
どうしたらいいのかわからないのはわたしも同じで。
樹のこと確かに物凄い速さで意識しているけれど、確実に恋してる…って言いきれない。
年下のイケメンに好意を持たれて浮かれているだけかもって。
すごい期待の目でわたしを見つめる樹の瞳は微かに揺れている。
「あのいっちゃん…そういうの、もうちょっとたってか、」
…したことないって言ったのに、樹から唇を寄せてムチュっと重なった。
自分でして…って言ったのに、樹からしやがった。
「…すげ、緊張した。俺心臓壊れそう…。」
苦笑いの樹にちょっとだけ緊張が解けたのはわたしの方だった。
初々しい反応が可愛いなんて思っている自分がいて。
「次はゆきみさんから…して。」
甘えるようにわたしの髪を指でくるりともてあそぶ樹が軽く目を閉じて指先だけちょこっと握ったんだ。
できないなんて言葉、言えないようにさせた樹はずるい。
とてもじゃないけど初めての恋愛とは思えない。
思えないけど、きっと本当に初めてなんだって。
だってそう、余裕そうな顔しても微かに緊張のせいで震えている唇…
背伸びをしてちゅ、っと小さく唇を重ねた。
ニって笑って「もっかい。」樹の柔らかい声と甘い香り。
背伸びをしてもう一度唇を重ねると、グイっと腰に腕が回された。
「離したくないんだけど…。」
「ンッ…。」
恋って呼んでもいいのかわからないのに、こんな風にキスもしちゃう自分がいることを今日初めて知った。
だけど、わたしに捕まる樹はやっぱり可愛くて。
「明日も明後日もその次の日もそのまた次の日も、俺にキス、してください。」
まるで女の子が言うような台詞だって思った。
でもそんな樹を、わたしは昨日よりも今日、もっと好きになってしまうのかもしれないなんて。
心の奥底で未来への鐘が鳴った気がした―――
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