運命の女 

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【side ゆきみ】


「で、樹となんかあったんすか?」

「…川村くんって、空気読めるわりに意地悪だね。」

「はは、壱馬でいいっすよ。みんなそう呼びますし。」

「話逸らすのもうまいなぁ。顔もかっこいいし、モテルでしょ?」

「樹ほどちゃいますよ。キスでもされたんですか?」

「な!そんなことされてないもん!」

「ほんなら手でも繋がれました?」


…――――言うまいって思いっきり口を閉ざした。

でも壱馬くんはブって笑って。あ、この子笑うとトイプーみたいに可愛いかも、なんてドキドキ。


「分かりやすすぎますよ。ええこと教えてあげます。樹、女と付き合ったことないですよ。」

「うそでしょ!?」


ロビーで響き渡るぐらいの声が出てしまって、入口のトサカに視線を送られた。

やめてその顔、こっち見ないで。


「ほんまです。クリスマスに彼女欲しいんですって、樹。デートしていちゃいちゃしたいって言うてましたよ。」

「そう、なの?」

「立花さんに研修の時一人づつ聞かれました。彼女欲しい奴おる?って。ほしたら樹が手挙げてて。言うても俺と北人も欲しいですけどね。ほんでどんな女がタイプか?とか、彼女と何したい?とか色々むっちゃ聞かれて、それ素直に答えた樹に対して言うてましたよ。…それ全部当てはまってる運命の女がこの劇場におるよ!って。それが、…」


パチンって指を鳴らして「一ノ瀬さんやんな!」そう笑った。

朝海ちゃんの意図をこと細かく全部話してくれた壱馬くんに苦笑い。

まさかそんな風に言ってたなんて。それにしても運命の女って…


「立花朝海にやられた感満載…。」

「ええやないですか、樹優しいですし、イケメンやし、文句ないですよね?」

「そうじゃなくてね。わたしと樹くん、どう見ても釣り合わない…。」

「年齢ですか?」


可愛い顔して痛いとこをつく壱馬くんにまた苦笑い。


「男は女が思うほど、そこ気にせんと思いますけど。大事なんは、ココですやん、ね?」


トンっと胸を叩くとニコっと微笑まれてなんかもう「うん。」って言いたくなったけどやめた。



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