ビル仲間
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【side マイコ】
「中沢さん?」
横から軽く顔を覗き込まれて名前を呼ばれた。
へ、誰?よく見ると、「あ、長谷川くん!え、なんで?」だってこんなとこ。
「僕ビル好きなんです。」
「うそ、私も!」
「マジすか?」
こんなマニアックな写真展にまさか知り合いがいるなんて。
「最近写真にハマってて。ビルよく撮るんです。」
首からカメラを下げている長谷川くん。いつも制服だからわかんなかったけど、私服お洒落。キャップも可愛い。
「見たい長谷川くんの撮ったビル!」
「いいですよ、」
カメラを取って画面を私に見せてくれた。
そこにはすごくマニアックな角度から見えるビルで、「…すごい、やばい、タイプ!」思わず長谷川くんの腕を掴んでしまった。
「え、あの中沢さん。」
真っ赤な顔の長谷川くん。え、私、え、
「わ、違うの!ビルの角度とか光の加減とか!ごめんね、変な言い方しちゃった!」
「いや、そうですよね、はは、分かってます、はい。」
長谷川くんがタイプだって、思った?…そんなことないけど、この子嫌いじゃない。
てゆうか、こんなに趣味が合う人、初めてかも。
マニアックな趣味だし、自分の求めるものと違うものを求めている人だと意見が食い違う。
それだと話していても余計に疲れてしまって。
だからいつも一人で見に来ていた。
だけど。
「「あの、よかったら一緒に…、」」
長谷川くんも同じようにそう口にしたんだ。
思わず顔を見合わせて二人でわらいあう。
だって可笑しいよ、こんなの。
「うん、よろしくお願いします。」
「こちらこそ。あ、中沢さん。LINE聞いてもいいですか?」
ちょっとだけ勇気のいる一歩を、長谷川くんの方から歩み寄ってくれたことがすごく嬉しかった。
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