自惚れんな!
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大きな目と彫りの深い顔立ち。
細めのスタイルと、小さめの身長。
思いっきりジロっと睨みつけた。
「気分悪い、帰る。」
「え、朝海?大丈夫?」
「あたし熱あるんだった。大樹ちゃん早くあがってよー。」
窓際の椅子に座って足をバタつかせる。
「お前熱あんの?」
「そうだよ、フラフラ。」
「僕のせい、ですよね?ほんとすいません。」
頭を下げるカミケンを心配そうに見ているやましょー。そんな二人を不思議そうに見ている亜嵐くん。
「なんでお前らのせい?」
口を挟んだのは亜嵐くんで。
「自分がフィルムセット失敗してご迷惑かけたんです。熱があるとは知らずにすいません。」
「別にあんたのせいじゃない。」
「でも、なんかしないと気がすまない…。」
「は?自惚れないでよ。誰もあんたみたいな新人のへまなんて何とも思ってないし。ほんと具合悪いから黙っててよ。」
自分でもカアーッとなって何言ってるのか途中でわかんなくなっていた。
そうこうしているうちにどんどんスタッフルームに人が入ってくる。シフトの上がり時間前で交代スタッフがひっきりなしで。
「お疲れ様ー!」
ゆきみさんが元気よく入ってきた瞬間、着替え終えたいっちゃんを見てくるりと半転して出て行ったんだ。
取り残されたいっちゃんはちょっとだけ苦笑い。
「いっちゃん、カラオケの時ゆきみさんになんかした?」
「…してないと思います。」
何もしてないわけでもないのかな?
ちょっと急に楽しくなってきて、あたしはカミケンもやましょーも無視してゆきみさんを追いかけて女子更衣室に入った。
「あ、朝海ちゃん、お疲れ様。大樹ちゃんに具合悪いって聞いたけど大丈夫?」
「うー気持ち悪いですぅ。」
「え、大丈夫!?直人さんも早番だから送って貰えば?今日確か車で来てたよ。」
「直人さんに送ってもらうくらいなら一人で帰ります。」
そう言い放つあたしにゆきみさんは苦笑い。
てゆうか、直人さんが車で来てるって知ってるゆきみさんがちょっと嫌だ。
だから聞いてやる。
「ゆきみさん、藤原樹となんかありました?」
スルッとゆきみさんの手から着替え用のシャツが落っこちたんだ。
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