クレープとガールズトーク
( 10/88 )
ちょうど、シネマ入口では朝海ちゃん達が集まっていて。そろそろ会場アナウンスの時間だった。
マイクを取ったのは新人川村くんで。
「本日はLDHシネマズに御来場いただき誠にありがとうございます。」
「うわ、イケボ!これやばいね。」
思わずマイコと二人で足を止めると、入口の朝海ちゃんが笑顔で手を振っている。なんならそのままこちらに寄ってきた。
「え、二人とも休憩?あたしも行きたい行きたい!あと3分待っててくださーい!」
「3分なんていいよ、もう行こ、朝海ちゃんも!」
「ゆきみさんオッケー?じゃあ行く!いっちゃん、あたし休憩入る!あとヨロシク!」
ぶんぶん入口の藤原くんに手を振ると、そのまま朝海ちゃんもついてきた。
「おいひぃー!奢りだと思うとちょうおいひぃー!」
「ほんと、美味しい!生き返るー!」
ショッピングモール内にある劇場のため、飲食は沢山あって、よくよく同じ階にあるクレープ屋さんで食べることが多かった。
「はいはい分かったから。それで、わたしの相手だけど、朝海ちゃん。」
「あっはー!ゆきみさん、気になってたんでしょー!誰だと思います?あたし的なおすすめ物件!」
「いやわかんない。さっぱりわかんないし、乗り気じゃないのわたし。」
そう言うと、クレープをぶっかけそうな勢いで「なんでっ!?」なんて叫ばれた。
「なんでって、だってなんか恋とか今更できないし。年下と付き合ったことなんてないし。」
パクっと苺を食べると甘酸っぱくて美味しい。そんなわたしをカシャって写メにおさめた朝海ちゃん。
「ゆきみさんっていっつも美味しそうに食べますよね!」
「ちょっとーそれ褒めてるの?貶してるの?」
「もちろん、褒めてます!」
「ならいいけど。で、誰?勿体ぶってないで教えて。」
わたしの言葉に朝海ちゃんとマイコは顔を見合わせて笑う。
「じゃあじゃあ、今日みんなでカラオケ行きませんか?じつはうちの新人くん達とみんなで行く予定で。どーせならみんなで行った方が楽しいですし!マイコさんとこの新人くんも来そうですか?」
「大丈夫みたい、みんな来るって。」
「やったね!その時まで、モヤモヤしといてくださーい!」
何を企んでいるのか?そうじゃないのか?朝海ちゃんの気持ちはわたしにはさっぱりだ。
「わたし、音痴だからなぁ。」
溜息をついたら休憩時間は終わってしまった。
PREV |NEXT