クレープとガールズトーク 

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ちょうど、シネマ入口では朝海ちゃん達が集まっていて。そろそろ会場アナウンスの時間だった。

マイクを取ったのは新人川村くんで。


「本日はLDHシネマズに御来場いただき誠にありがとうございます。」

「うわ、イケボ!これやばいね。」


思わずマイコと二人で足を止めると、入口の朝海ちゃんが笑顔で手を振っている。なんならそのままこちらに寄ってきた。


「え、二人とも休憩?あたしも行きたい行きたい!あと3分待っててくださーい!」

「3分なんていいよ、もう行こ、朝海ちゃんも!」

「ゆきみさんオッケー?じゃあ行く!いっちゃん、あたし休憩入る!あとヨロシク!」


ぶんぶん入口の藤原くんに手を振ると、そのまま朝海ちゃんもついてきた。


「おいひぃー!奢りだと思うとちょうおいひぃー!」

「ほんと、美味しい!生き返るー!」


ショッピングモール内にある劇場のため、飲食は沢山あって、よくよく同じ階にあるクレープ屋さんで食べることが多かった。


「はいはい分かったから。それで、わたしの相手だけど、朝海ちゃん。」

「あっはー!ゆきみさん、気になってたんでしょー!誰だと思います?あたし的なおすすめ物件!」

「いやわかんない。さっぱりわかんないし、乗り気じゃないのわたし。」


そう言うと、クレープをぶっかけそうな勢いで「なんでっ!?」なんて叫ばれた。


「なんでって、だってなんか恋とか今更できないし。年下と付き合ったことなんてないし。」


パクっと苺を食べると甘酸っぱくて美味しい。そんなわたしをカシャって写メにおさめた朝海ちゃん。


「ゆきみさんっていっつも美味しそうに食べますよね!」

「ちょっとーそれ褒めてるの?貶してるの?」

「もちろん、褒めてます!」

「ならいいけど。で、誰?勿体ぶってないで教えて。」


わたしの言葉に朝海ちゃんとマイコは顔を見合わせて笑う。


「じゃあじゃあ、今日みんなでカラオケ行きませんか?じつはうちの新人くん達とみんなで行く予定で。どーせならみんなで行った方が楽しいですし!マイコさんとこの新人くんも来そうですか?」

「大丈夫みたい、みんな来るって。」

「やったね!その時まで、モヤモヤしといてくださーい!」


何を企んでいるのか?そうじゃないのか?朝海ちゃんの気持ちはわたしにはさっぱりだ。


「わたし、音痴だからなぁ。」


溜息をついたら休憩時間は終わってしまった。

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