一方通行な気持ち

【side ゆきみ】


「ねぇ北ちゃん。わたし朝海になんかしちゃったかなぁ？」
「え？そんなことないよ。ケンちゃんと仲良いし、マイコ達もいるからだって。ゆきみは俺がいるからいいでしょ？」
「うん。北ちゃんいればもういい。」


ニコっと微笑むと真っ赤になって目を逸らす北ちゃん。わたしと北ちゃんと樹は幼馴染で３人仲良く今まで生きてきた。でもいつからかわたしの中で北ちゃんの存在が大きくなっていて…。鈍感な北ちゃんはどうにもわたしの気持ちには気づいてなさそうだけど。このキャンプで北ちゃんとの仲を幼馴染から恋人にしたいって思っているものの…なんだかうまくいかない。せっかくのキャンプだから北ちゃんにわたしをもっと女として見て貰いたいし、意識して貰いたいのに…。


「ゆきみ、一口ちょうだい？」


朝海とケンちゃんがソフトクリームを買いに行っちゃって、そんな２人の後姿を見送っていたりっくんがニッコリ微笑んでわたしの前で口をアーンってして待っている。困るよりっくん。りっくんは朝海の好きな人なのに。そっぽを向いてる北ちゃんの足元目掛けてわざとフランクフルトについていたケチャップを落としてやった。


「わ、北ちゃんごめん、こぼした！」


そう言ってタオルで北ちゃんの見事にかかった股関節に手を添えると悲鳴みたいな声をあげる。


「キャー！なにすんのっ！触っちゃダメ！」


ブンブン首を横に振って真っ赤な顔の北ちゃん。自分のタオルでポコポコ股間を叩いていて超可愛い。でも次の瞬間…―――「ちょっとこい。」フランクフルトを咥えたままのわたしの手首を掴んだのはもう一人の幼馴染、樹。


「痛いっていっちゃん、離してよ。」
「無理。つーかお前なにしてんだよ。」
「なにって…いっちゃんも食べたいの？」


ンって口に咥えたまま棒の方を差し出すと「…食う。」そう言ってわたしの肩に手を乗せると横からウインナーに噛り付く。ド至近距離で樹と目があって…慌てて離れた。…なんだろうこの嫌な予感。だって一歩離れたわたしとの距離を埋めた樹。ほんのり目を細めて近づく樹に、不意に視界が明るくなる。


「よせよ、何してやがる。」


聞こえたりっくんの声に心臓がバクバク高鳴っている。りっくんにフランクフルトを渡して「喉乾いちゃった。マイコのとこ行ってくる！」逃げるようにお店の中に入り込んだ。

もう樹…最低。

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