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無言で苦笑いしかできない弱虫な自分に反吐が出そう。学生の時みたいに勢いで色々いけたらよかったのだろうか?友達が背中を押してくれたことすらどうにも受け止められなくて。それでも嫌な顔一つしないで駅に行ったらマイクアナウンスで私の使う電車が運転見合わせの連絡が流れていた。


「あ、止まってる。やだ。」

「はは、決まり!俺ん家行こう!」

「え、ちょっと!」


私の手を取って強引に自分の使う電車へと移動する。そんな私達を見て笑顔で手を振るゆきみと直人くん。嘘でしょ、助けてよ!


「ご、強引。岩田くんそんな人だった?」

「知らなかったでしょ?そこそこ猫は被ってますんで。一応社会人としてね。でももうプライベートなんで。俺ずっとこうしたかった、絵未さんと。」


キュッと繋がれれた手を少しだけ強く握られた。ドキンと胸が脈打つ。これってやっぱり自惚れてもいいのかな?ここまで来たら後には返せないよね?だから私も…そんな意味を込めて岩田くんの繋がれた手に指を絡めてみた。ほんの一瞬固まった後、すぐに視線が飛んできて笑う。


「いい方に取りますよ?」


そんな言葉が届いたんだ。


「私だっていい方に取るよ?」


だからそう言ってやった。そしたらクスって嬉しそうに笑って私の前髪に触れる。そのまま電車が混んでるのをいい事に一歩近づいて私の肩に顎を乗せる。やばい、密着!


「台風最高!」


そう言ってまた岩田くんが笑った。



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