不意


サスケ...私の育て方が悪かった?
復讐何て辞めて欲しい
それはきっとあの人だって望んでいない
サスケだけ殺せなかった理由

それはたった一つだよね

復讐をしたからって何も残らない、
残らないし逆に何も手に入らないから

死人はもう二度と甦ることは無い
後に残る気持ちは歓喜でも優越感でも
何でも無い


只、虚しさ。無情


とっくに洗い物は終えている筈なのに
蛇口から出る今の私には氷が
突き刺っている様な感覚の水に掌を
浸していた

「いけないいけない...サスケを送り出さなきゃいけないのに」

蛇口を捻り勢い余る水は次第に勢いを
無くし水滴へとなっていた
そして冷え切った腕をタオルに縋る
様にそっと丁寧に拭き取っていく


それにしても今日の天気は凄く穏やかで
太陽の光が眩しい
絶好の洗濯日和だけど長袖じゃもう
十分暑そうだな

でも今日は目覚めも良かったし朝一に
眩しすぎる光を浴びて身体は
リラックスしてどことなく軽い


そうだ、と私は忘れない内に
自分の寝室へと向かった


「姉さん、俺の額当て知らないか?」


声の主の方へゆっくりと振り返る

顔にかかった水を完全に拭き取れて
いないからかタオルに顔を埋めたまま
サスケは尋ねてきた
やっとタオルを手放し表情を
露わにしたサスケ

怒ってる、やっぱりね

予想が見事に的中し私は胸の奥で
心底笑っていた

どうせサスケの事だからきっとちゃんと
閉まっていたのにあんな大切な物を
無くしてしまったというショックと
自分の失態に酷くプライドが傷付いて
いるんだろう

本当は私が持っているんだけどね


「おいで、サスケ」

「...?オイ、俺は今焦っているっていうのに...後、餓鬼扱いは辞めろ」

「はいはい、ごめんね」


ひょいひょいと笑顔を向けて手招き
すれば憎たらしく不貞腐れた表情を
浮かべながらも素直に私の元へ
来てくれる

こういう所が可愛いんだよね
サスケって、ふふ

サスケに背を向けさせそっと額当てを
彼の頭に結びへかかる

結ぶ途中に手が彼の耳に
当たってしまった
サスケは髪が長いからはっきりと
耳は見えていないんだけど
きっと真っ赤なんだよね

私の指先が触れた時サスケの耳から
熱が伝わって来たもん

姉相手に何照れてんの、バカ


「矢っ張姉さんが持ってたのかよ」


ごめんね、どうしても結んで
あげたかったの。と一言告げれば
サスケはまんざらでもなさそうに
口角を上げ笑みを浮かべた

サスケも今日から正式な忍者...

参ったな、もう子供扱い出来ないよ


私達は二歳しか変わらない、そして
私達は一滴たりとも血が繋がって
いない姉弟何だから


最後に後頭部で私の意思を込めて
キュッと強く結んだ、そして終わりを
告げる様にポンッと軽くサスケの
頭上に掌を置いた


「出来たっ、似合ってるよ」


目の前にある全身鏡だ私達は
鏡の中の自分達と睨めっこをする

相変わらずサスケの黒い瞳に
光は宿してはいなかった


それでも私は貴方の隣で笑い続ける


「ん、サンキュ。時間だな、そろそろ行かねェと」

鏡の中で私と視線が交わうと直ぐに
視線を逸らしサスケの頬は熱を帯び
赤面していた、トマトみたい
照れ隠しのつもりで早足で玄関に
向かったのもバレバレだし

そして私も一足遅れてサスケの背を追う


「行ってくる」

「行ってらっしゃい、カカシに宜しくね?あとサスケもちゃんと...



わっ 、」

「カカシカカシ朝から五月蝿い...


行って来ます」


昔の子供染みたハグとは全く違った
それはサスケの成長をも物語る

背丈は僅かだけど私の方がまだ高い
でも油断していたとはいえ片手で
抱き寄せられるなんて。

不覚にもときめいてしまった自分が
少し悔しい


サスケはいい男になれるよ

私の自慢の弟だもん


さて...、私も用意しよっかな




prev next




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -