30/2.
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『んあぁ!あっあぁっ、んっふぁ、』
「すごいなname、昔はあんなにキツかったのに……今じゃすんなり入ってしまう。」
『あっんあ!やっあ、アッア!やめってぇ…抜いてぇ…!』
「やめる必要性は微塵も感じないな。続けるぞ。」
『あっあ、だめ伯父さ…んっ…お願いだから、あぁ……!』
アタシがどんなに拒絶したって、もはや厭らしい声にしかならなかった。
こうなってしまってはもう、アタシが伯父を止める方法は皆無だった。
ヌル…
そうしてようやく引き抜かれたその指の、透明な液が。
アタシの顔の前まで身を乗り出した伯父により、何のためらいもなく付けられる。
『んっ……!いやぁ、』
「嫌じゃないだろう?どうだ自分の愛液は。」
『うぅ……いやぁ、いやあ、』
何度首を横に振ったところで、伯父の行為が止むわけもない。
今度は胸元まで衣服をたくし上げられ、乱暴なキスに顔が歪んだ。
『んぅ、ふぁ……』
「はぁ…あ…」
『んっ、んん……!』
イヤ。今日は本当にイヤだった。
ガリッ、
「ッ……、はぁ、」
無理矢理なのはいつものこと、だけど今日は何かが嫌だった。
ものすごい空間の違和感が、アタシの地肌を取り巻いて離さなかったから。
「……はは、見ろ。貴様が歯を立てたせいで血が出たぞ。」
『うっ……はあ…』
「今日はやけに食って掛かるじゃないか。何がそんなに気に入らない。」
アタシの顎を片手で押さえ込むと、乱れたアタシの髪の間からこちらを覗き見てくる伯父。
アタシはその視線から逃れるべく、ささやかな抵抗として垂れる髪の死角に瞳を隠した。
……そうだ。確かに今まで伯父さんには、いろんなところで犯されてきた。
ベッド、ソファに、お風呂場、机上…………
―――だけど、車内だけは……。
―「ほらname、乗って。」―
車の中は、アタシとイタチを長く繋いできた最後の場所。
―「いつもオレの勝手に付き合ってくれて、本当にありがとう。」―
監視役としての彼と、恋人としての彼の。二つを感じていられた特別な場所。
そんな場所でまで、伯父さんに犯されたら、アタシ、
(……っ!もう…イタチに合わせる顔がない……!!)
込み上げる涙を隠すためと、目の前の伯父を拒否するために。
アタシは両手で、自身の顔を完全に覆った。
なのにそれすらも強い力で引き剥がされそうになり、アタシは伯父の胸板を突っぱねるようにして片腕を張る。
『やめてっ……やめてよぉ、伯父さん…っ!』
「無理だな。何がそんなに気に食わん。」
どうしよう、どうしよう、どうしよう……!!
『だってぇ……ひっく…!あ、アタシもう嫌ぁ…!』
「……何だ泣いているのか。もっとよく見せてみろ。」
どうしたらアタシは、あの頃のように笑えるの……?
どうやったら、イタチにまた会って話ができるの……?
監視役だろうと、何だっていい。
もう一度、あの笑顔に会いに行けるためなら。
―「“お前がこの先どんなに嫌がっても、泣いても、側にいる。”」―
―「他の誰より、お前より……オレが一番に、nameの隣を望んでるんだからな。」―
イタチ…イタチぃ……
『……伯父さん、アタシ…………
……やっぱりイタチが、好き…。』
―――不意をついたように、ころりと口からこぼれ出た。
涙でボロボロの顔で、伯父に腕を引き剥がされ合わせた目で……。
『好きっ……好きなのぉ…!イタチと二週間だけ、恋人になれて、幸せすぎてっ……アタシ、もうこれ以上は駄目…っ!』
せっかく今まで隠してきたのに……もう、引き返せなかった。
だが伯父は、依然として言葉を発しない。
てっきり怒り狂って、今までにない惨事が待ち構えているのかと思えば。
「そうか、ようやく言えたな。だが……」
このとき伯父の目は、普段アタシには決して向けられることのない目をしていた。
それこそ会社の部下や、世間一般の人間に向けられる伯父の目……。
―――弱者を、小馬鹿にしているような目だった。
「貴様は本当に……馬鹿で可愛い奴だな、name。」
本気の冗談をついて、このあとアタシはすぐ、自分で歯車を大きく狂わせたことを知った。
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