デイダラ長編 | ナノ
24/1.














「ブァーカ。そいつは百パーてめーが悪いわブァーカ。」

「……んなことオイラにだってわかってんだよ、うん……。」






この日押しかけてきたサソリの旦那に、例の出来事を洗いざらし吐かされたオイラ。



当然の反応とともに、これまた何度目かわからない舌打ちをかまされた。






「わかってたら普通しねぇんだよ。ったく、これから夏休みで毎日飯の心配しなきゃなんねぇってときに、オレの飯担当のnameに変なちょっかい出してんじゃねぇよ。テメーはあれか?このオレに毎日カップ麺食って過ごせってのか?」

「知らねぇよ!つーかnameに図々しすぎるだろ旦那!」

「レイプまがいなことしたテメーよりマシだ馬鹿。」

「…………。」






……そりゃそうだ。

あのときのオイラの行動と比較したら、何だって許されるんじゃないかって気さえした。






仁王立ちする旦那に対して、リビングのソファでごろりと横向きになるオイラは。

もう、全てにやる気が起きない。






「で、テメーはせっかくの夏休みもこうしてウジウジしてたわけだ。」

「あーそーだよ。もう放っといてくれよ、うん……。」

「そうやってテメーのことばっか考えてるから駄目なんだよ。今頃nameの奴がどうしてるとか考えねぇのかよ。」

「……どうしてるって何だよ、うん。」

「毎年夏休みに宿題教えるだのやってきたんだろ?んで今回のことがあって、よっぽど根性座ってねぇ限りnameの方からテメーに教わりに来ることもねぇだろうし。そんなnameが、今頃宿題どうしてると思う?」

「……!」

「そうじゃなくても飯の買い出しとか家のこととか、いろいろやることやってんだろ。そこにはname一人じゃ解決出来ねぇことが当然出てくる。それを今頃どうしてんだろうなぁ。」






……確かに、言われてみれば気にはなる。

けどだからってオイラの方からnameを訪ねるなんてことも、出来やしない。






ー『タス、ケテ……クダサイ……』ー

ー『ユルシテ、クダサイ……ドウカ…ドウカ……!!』ー






……あんなことしておいて。

どのツラ下げて会えばいいってんだよ。






ガシッ、

「おら行くぞ。」

「ぐへっ!ど、どこ行く気だって、」

「寝ぼけたこと抜かしてんじゃねぇよ、nameん家に決まってんだろが。」

「っ……!!無理無理オイラ絶対無理!!」

「無理なのはテメーのその態度だ馬鹿、キモいんだよ腹くくれ。」






そうして無理矢理オイラの首根っこを掴んだ旦那が、ヅルヅルとオイラを家から連れ出した。
























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ガチャガチャ、

「ん、鍵かかってら。よし、合鍵出せ。」

「……何でオイラが持ってること知ってんだよ旦那……。」

「オレには全部お見通しだバーカ。」






nameん家のアパートに着いて早々、右手を出して催促される。






……普段母親が出かけてるもんだから、万が一何かあったときのためにと。

両名の親が公認済みで、オイラが合鍵まで持つ始末だった。






(くそっ、居留守だろうと鍵かかってたら引き返せるって思ってたのによ、うん……!)

「居留守でも使われたんじゃ、暑い中こうして来てやったってのに堪んねぇからな。」

「ってマジでお見通しかよ!怖ぇよ!」

「おーいname、来てやったぞ。居留守しても無駄だからな。」






そう呼びかけながらヅカヅカと、人ん家だろうとお構いなしで入っていく旦那。



ほんとそれだけの根性があれば、オイラもこんなウジウジしなくて済むのにな、なんて。






「……居留守じゃねぇみてぇだな。買い物にでも行ったのか?あいつ。」






nameの家は出ていった父親を除いて、母親とnameの二人暮らし。

典型的な1DKには、人の気配がなかった。






「い、いないんじゃ仕方ねぇよな、うん。」

「なに嬉しそうに言ってんだテメー。」

「け、けど何もしようがないのは事実だろ?ご近所に騒がれないうちに帰ろうって旦那、」

「手ぶらで帰れるわけねーだろ、いいから探せ。」

「はぁ?探すって何を、」

「宿題だよnameの。あいつがこの休みどうしてたかの基準になる。まぁどうせ一人じゃ出来ねぇ課題ばっかりだから手つかずだろうけどなぁ。」






そうしてこれまた大胆にnameの机周辺を漁っていく旦那……オイラ通報されても知らないぞ、うん。






「お、おい旦那やめろって。仮にも女子の私物なんだし、」

「ねぇな。」

「は?」

「ねぇんだよ、nameの宿題。」






散々引き出した痕跡を無くすように、それらを元に戻していく旦那。

狭い部屋の一角にあるnameの机近辺には、他にしまっておくような引き出しもカバンもない。






「ったく仕方ねぇ。明日の朝出直すか。」

「は?だ、旦那まだ懲りないのかよ、うん。」

「懲りるも何も、気にならねぇのかよテメーは。オレの予想が正しけりゃ……」






そう言って今度はキッチンに周り込み、これまた抵抗なく冷蔵庫の扉を開ける。






「……食料は、切らしてねぇみてぇだな。」

「いや旦那、人ん家の冷蔵庫まで漁るとか末期だぞ、うん。」

「つまんねぇ冗談言ってる場合か。わかんねぇのか?今nameが出かけてるのも買い出しじゃねぇってことだよ。んで宿題が見当たらねぇってことは、nameの奴どっかで宿題に手ぇつけてる可能性が高ぇ。」

「……どっかって、どこだよ、うん?」

「それを明日突き止めんだよブァーカ。今日のお前ほんとブァーカ。」






そうやって罵られるのがもはやデフォになってきたのはひとまず置いておき。

やっぱり旦那は、遊んでいるようでしっかりしている。






「にしても他に頼る宛でもあんのか?nameの奴。」

「…………。」






勘ぐる旦那に対して、オイラの脳裏を嫌な予感がよぎる。






ー『ちゅー、しちゃったんだよぉ……!』ー

ー「…………は?チューしたって、誰と?」ー

ー『さっ、サイくんと……アタシ、びっくりして…』ー






……いや、まさかな。
























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「こんなことだろうと思ったけどよ。このオレを待たせるとはいい度胸じゃねぇか。」






次の日。

家にいたオイラをこれまた拉致った旦那が、夏の日差しのもとnameの家まで連行する。






「いや、だいたい朝7時nameん家集合とか無理ゲーだろ!うん!」

「nameのスケジュールがわからねぇ以上、前もって動くのは当然だろ。あとどうせテメーからは絶対来ねぇだろうから、それを引きずり出す時間も考慮してだ。」

「当たってるよ、うん!……で、何だよその格好。」

「尾行と言やぁグラサンだろ。」

「……旦那ってわりと形から入りたがるよな、うん。」






そんなやり取りをしている間に、nameのアパートに辿り着いたオイラと旦那。



もうnameが出かけた後なんじゃないかって期待していたけど、無情にもその扉がガチャリと開く。






「お、ジャスト。」

「!!name……、」






だがこうしていざその姿を拝めば、オイラはどうしようもなくこみ上げる。






遠くから見るnameは、黄色い花柄Tシャツにジーンズ生地のかぼちゃパンツ。

麦わら帽子から覗く表情は、白のマスクで覆われていて読み取れなかったものの。






「見ろよ、昨日部屋になかったカバン引っさげてら。やっぱどっか行く気だな、オレたちも行くぞ……っておいデイダラ、何してんだテメー。」

「いや、ごめん旦那。何か久々にnameのやつ見たらその、何ていうか………尊い、うん。」

「どこぞのファンかよキショい。いいから早く行くぞ。」






そんな罵倒を受けつつも、オイラの足がようやく動く。

尾行するって言ってもnameのガードはユルユルなもんだから、こっちはコソコソせずほぼその後ろからついていくだけだった。


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