デイダラ長編 | ナノ
2.














『デイダラデイダラ!抱っこ!』






その短い腕を精一杯伸ばし、ようやく首の後ろに回してきたあの日は過去の話。






あぁ、それがいつからだっけな。






『ねぇデイダラ、その髪ツインテールにしてよ!お願いお願い!』






ただのアホに、成り下がっちまったのは……。
























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そんな馬鹿な発言が聞こえたのは、高校のささやかな休み時間。






『ぜぇーったい似合うって!デイダラの髪さらっさらだもん!その髪はもう結わえるためにある!』

「褒めると同時にけなすって、こういうときのお前はどんだけハイスペックなんだよ、うん。」

『そんな無意味に垂れ流してるなんて勿体ないでしょ?あ、丁度いいや。このピンクのゴム貸してあげる!』

「いらないやめろ近づくな。」






それはもうノリノリでオイラに近づく幼馴染みに、己がしうる限りの嫌悪感を放つオイラ。






そうやって心の底から否定すれば、nameは櫛を持つ手をブランと下に垂れ下げる。

かと思えばその手をキツネにして、今度は友達のようにそれに話しかけ始めた。






『んもう、いつからそんなつっけんどんな態度とるようになったの?あの頃はそりゃあさぞかし可愛かったのにね〜コン太くん。』

「んな昔の話を引き合いに出すのがそもそもおかしいだろ、うん!」

『そうだ!アタシがぎゅってしてあげれば昔のデイダラに戻るかも!ほらおいでデイダラ!』

「だからオイラはペットか!」






そうして本人は名案とばかりにその両手を広げてくるが、オイラはそりゃあガックシだ。






とまぁこんな感じが日常茶飯事で。

nameは、5歳児がそのまま成長したかのような幼稚な言動でオイラを振り回す。



しかもそれでいて本人は中途半端に背伸びして、周りの世話を焼く母ちゃんポジションを演じていたりもする。






―『大きくなったら結婚しようね!』―

―「あたりまえだろ、うん!」―






……いつかのセリフと今の現状を照らし合わせて。

そのあまりの温度差に、オイラはそりゃあ深いため息をついた。






―――言葉の通り、オイラは小さい頃からnameが好きだった。






―『デイダラ、だーいすきだよ!』―

―「お、おいらも好きだぞ!うん!」―






もちろんガキの頃はまだフワフワした形のない“好き”だったが、今ではもう立派な大人の“好き”だ。

触りたいとも思うしキスもしたい。



なのにこの歳になって、恋に進展するどころか退化しているなんて、当時のオイラは夢にも思わなかった。






『デイダラは顔は可愛いんだから、もっとこう、きゅる〜んってしていいんだよ?』

「!」






そんな異様な発言に、オイラが再び顔を上げれば。

そのきゅる〜んと同時に猫の手をつくって子招いては、nameは上目遣いにオイラを見た。






……不覚にも可愛いとか思ったものの。何だきゅる〜んって。

男のオイラがきゅる〜んってか、気持ち悪い。






「何でいい歳したオイラがベタベタしなきゃなんねぇんだよ。普通だってその、やっぱ女が甘えてくるもんだろ、うん。」

『んもぅ〜!ま〜たそんなことばっか言って!お堅いんだからぁ!じゃあいいもん!アタシ、サソリにやってもらうから!』

「は…」

『あのプリティフェイスできゅる〜んとか軽くご飯三杯はいけるからね!あーデイダラの根性なしぃ!も知〜らない!』






そうして自分が言いたいだけ言うと、nameはその唇を尖らせて体の向きを反転させる。

そんな幼馴染みの背後に、ようやくオイラの心がジクリ。






―『デイダラ、デイダラ!抱っこ!』―






―――nameがオイラを、頼ってくれない。






―『あーんデイダラのウジ虫!うーじうーじ!もう一緒に買い物なんてしてやんないんだから!』―






それだけが幼馴染みやってて、どうしようもなくもどかしい。

もちろん男として頼られたいのは山々だったが、ここら辺で観念するしかないようだ。






―――ダンッ、

『!』






そうしてついに手に汗握り決心したオイラが、その一歩を踏み出すと。

驚いたnameが、その目をぱちくりさせてオイラを映す。






―『……デイダラありがとう。守ってくれたんだね、アタシのこと。』―

―「っ…!」―

―『頼もしいなぁデイダラってば。』―






……そうだ、お前は。

そうやってオイラだけを見てりゃあいいんだ。





そんな少しのを優越感を感じれば―――それを燃料に、オイラは自身を奮い立たせた。
























「……き、きゅるー……うん…。」






……あぁ、ついにやっちまった。



さすがにnameの顔は見れなかったが、オイラは例の猫の手のような仕草も忘れない。






『…………。』

「…………。」

『………………。』

「……っ………、」






……しばし流れる沈黙が痛い。

だがその視線に穴が空くほど見つめられれば、nameは途端に弾けた。






『〜っ!!キャアアァ!!ちょっと今の聞いたサソリぃ!?しかも最後さりげなく“うん”だって!!あざとい!悶え死ぬぅ!!』






そうして一人喜び勇んでは、そのままの体勢のオイラを残し。

nameはドタドタとサソリの旦那に近況と、その旨を報告しに行ってしまった。






……あぁ、こんな気違いに惚れたオイラの馬鹿。
























ツインテール悪夢

『きゃあああ!!やっぱりアタシの言った通り!!ほら見て鏡!すっごく可愛い、食べちゃいたい!!』

「クククッ、デイダラ良かったな。待ちに待ったnameからのハグだ。」

「……オイラもう死にたい。」


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