デイダラ長編 | ナノ
17/1.














何のせいかと言われれば、きっとこれが第一原因。






その日は、朝からちょっとおかしかったんだ。






『おは、ヒャック!おはようデイダラ!』

「来んの遅ぇよ!!今日終業式だって昨日散々話しただろ、うん!しかも何でかお前二学年代表でスピーチするって言って張り切ってたじゃねぇか!もうクラスの連中も行っちまったし、とっととカバン置いてオイラ達も行くぞ!!」






アタシが教室の扉を開ければ、そこには唯一アタシを速攻で連れ出そうとスタンバッている幼馴染みの姿が。






ーーーグワシッ!!

だがしかし。アタシは引っ掴まれた手首を逆にガッチリ掴み返した。






『やーダメダメ!アタシこんなんで…ヒャック!全校生徒の前でスピーチとか無理ック!絶対これマイクに拾われちゃうもん!これじゃ、ヒックン!これじゃあスピーチどころじゃなくなっちゃう!アタシみんなに笑われちゃうっヒン!』

「言われてみればお前、さっきから変な語尾つけてるみたいになってるし。何だよ、朝からしゃっくりか?」

『そ…ヒック!そっそうなの!何だかしゃっくりになったの、ヒッ!久々だから、ヒャック!と、止め方わかんなくて、えーと…ヒックシ!どどどうやったっけ!?』

「そんな下らない理由で遅刻する奴があるかよ!あー何だっけかな、確か水ガブ飲みするとか、長時間息止めるとか……あとはビックリすると治るとか言うよな、うん。」

『わかった!えーっと水水水……あった!ポカリ!』

「いやそれオイラのポカリだっつーの!!勝手に人のカバン漁んな、うん!!」

『ゴクゴクゴクゴクッ……んん〜うまいっ!気分爽快!……ックン!』

「だぁーもう!!全部飲む奴があるかよ!んで結局治ってねーし!」

『うわっ!ホントだ!えー、ヒック!次は息を長く止めて……』

「あーもう放っときゃ自然と治るだろ、うん!いいから早く移動するぞ!!」






そうして最後には襟首を掴まれ、ズルズルと引きずられてまで連れ出される始末。



えーん酷いよデイダラってば!イヤァああ全校生徒に笑われるぅ〜ッヒ!
























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そんなこんなで、実際式を終えてみれば。

というより体育館に着いた時点で、アタシのしゃっくりは見事におさまっていた。






「だから言っただろ、自然と治るって。うん。」

『いやでも絶対まぐれだもん!次はないよあんな奇跡!』






あれかな、デイダラに襟首を締め上げられたのが良かったのかな?

息を止めるのも効果あるって言ってたし。いやしかし何という荒業よ、グヘェ。






「そこの仲良しお二人さん。通行の邪魔、どけ。」

『あ、サソリ!もう帰るの?また始業式に会おーねー!』

「ヤッホーnameちゃん!さっきのスピーチ良かったっスよ!にしてもマイクにおでこぶつけるなんてベタっスね〜!」

『うへへ、だって身長届かなくって!トビくんも夏休み楽しんでね〜!』

「他人の見送りはいいから、お前も早く帰る準備しろよ。うん。」






アタシが馴染みの顔に手を振るも、幼馴染みからは早くも催促の声が。






それもそのはず、今日は授業もなく終業式だけ。

お昼を前にわらわらと帰宅する生徒で、早くも校庭はいっぱいだ。






『あー……そのことなんだけどぉ、』

「何だよ、まだ何かあんのか?」

『えーっとぉ、この後ちょっと用事があるというかないというか……』

「どっちだよ、うん。少しくらいならオイラ待っててやるから早く済ませてこいって。」

『そ、それがちょっと立て込みそうでさ!下手したら一時間とかかかりそうだし、デイダラもお腹空いちゃうでしょ!?だから先帰っててよ!』

「はぁ?終業式に何やり残すことがあんだよお前。」






うぅ…ご、ごもっともでやんす……!






だがしかし、やっぱりここぞって時の嘘ほどサッパリ思い浮かばない。

また困ったときの『あーうー』を繰り返すアタシを前に、デイダラはハァッと息ついた。






「……またアレかよ。」

『あ、アレでやんす……!』

「こんな日にまで物好きだよな、お前って。」

『ご、ごめんねデイダラ!ほんとゴメン!この埋め合わせはまたいつか、』

「埋め合わせするときにはもう忘れてんだろ、うん。いいからとっとと行っちまえ。」






それだけ言い残せば少し不機嫌そうに、駐輪場へと向かって行く後ろ姿。






(うーん、何だか暗黙の了解みたいにしてきちゃったけど……。)






あの様子じゃきっと、またアタシがイジメどうこうに首突っ込むパターンだと思われてるよ。さすがに悪いことしたなぁ。






ーーーそれでも今日は、このあと何にも譲れない大事な大事な用がある。



アタシは幼馴染みが見えなくなったタイミングを見計らって、急いでその場所へとダッシュで向かった。


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