サソリ長編 | ナノ
17/4.














そうして迎えた卒業式。

行く高校が同じであるアタシ、サソリ、デイダラなどは、惜しむ関係もなく単調に式を終える。






「やっと糞みたいなここから抜け出せると思うと清々するな。よし行くか。」

『サソリ先に帰ってて。アタシは別に用事あるから。』

「……お前最近ずっとそんなだな。何かあんのか?」






眉間にシワを寄せて不信がる幼馴染みに、アタシは少し考える。



実はサソリには、サスケくんの存在を一切明かしていないのだ。

別に隠す意味もなければ、話す意味もないのだから。






『淡白なあんたとは違って、母校を名残惜しむ情があるだけです!』

「ほぅ、そりゃあ初耳だ。テメーにそんな繊細な部分があったとは。」

『もー!あんたはそうやってすぐ人の揚げ足をとる!やることないんならとっとと帰んなさい!』

「言われなくとも。あぁそうだ、」






不意に奴はその身を反転させると、思い出したように人を指差す。






「今日はオレそっち帰んねぇから。実家の方にある中学までの教材やら何やら片っ端からゴミに出すんでな。何かあったらそっち来い。」

『……別になにもないと思うけど、一応了解。』






アタシが頷けば、奴はそれで満足したようで。

さっきまで疑っていたのを気にする様子もなく、そのまま校門の外へと出ていった。






『…………っよし!』






アタシも一人気合いをいれると、彼のいる2学年校舎へと足を向けた。
























---------------






「お、姉さん丁度よかった。」






その教室に顔を出せば、サスケくんは颯爽とカバンを肩に提げアタシを連れ出す。



さまになっているその姿に思わずドキリ。

自然と掴まれている手がじわり。






「クラスの女子に呼び出されてるんだ。そいつが部活の先輩に挨拶行ってる間にずらかろうと思って。」

『へ、へぇ〜そう……こんな日にも告白されるなんて、やっぱりモテる男は違うね〜。』

「……姉さんにだけは、言われたくない。」

『え?何?』






急に拗ねたような彼の口調。

サスケくんが足を止めたので、アタシもその場で意図せず立ち止まる。






「姉さんには、オレのこと。そういう目で見てほしくない……。」






ピタリッ、

そんな言葉を受け、早くもアタシにフラグが立った気がした。
























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彼と話をする場所は、言わずともここだと決めている。






小さな空き地に立つ一本の桜の木。

綺麗に咲いたそれを見上げれば、その背景には灰色の空が広がっていることに気づく。






ピタリ……ここでもまたフラグ。






『そ、そういえばアタシ、今までサスケくんの都合も考えないで放課後呼び出してたね!ごめん、何かいろいろ考えなしだったかも……。』

「いや、今日はオレの方が連れてくる形になったしな。そういえば姉さんは良かったのか?他に惜しむ関係もあったんじゃ……」

『あぁ、それはないない!卒業っていっても、アタシと仲いい奴らはみんな同じ高校だしね。アハハ、』






アタシがぎこちなくカラ笑いをするが、サスケくんは何を思ったのか。

「そうか……」とだけ呟くと、その視線をあからさまに逸らす。






え、何その反応……何だろう、やっぱり何かが妙だ。






『サスケくん、何かアタシに隠してない?』

「いいや……」

『じゃあ何でさっきから目を合わせようとしないの?何か後ろめたいことでもあるんじゃ、』

「いや…………
























これで姉さんとも、お別れだと思って。」






…………え……?






アタシはその言葉に、しばし固まる。

だって、まさか彼の口からそんなことを言われるなんて。






「短い間だったけど、成長した姉さんが見れて良かった……。」






安心していた。今までサスケくんは、アタシを慕っていたから。

少なくとも、サスケくん自ら望んでアタシと距離を置こうとするなんて、考えもしなかったのだ。






『ま……待ってよサスケくん、アタシはまだ、そんな……』

「卒業…おめでとう、姉さん。またどこかで会えたら……」






淡白だ。あまりにもあっさりしている。

突然の彼からの告白に、アタシの決意が悲鳴をあげる。






…………どうして……、






―「姉さんが元気そうで何よりだ。」―






何で…………






―「みんな姉さんみたいな奴らならいいのに。」―






何でアタシから離れようとするの……?






アタシはもう血がのぼっていた。

でもそれ以上に、彼を見つめていた瞳にやけに熱がこもって。






―「姉さんには、オレのこと。そういう目で見てほしくない……。」―






それってつまり…………
























ポロリ…、

何故か自然と涙がこぼれた。まだ結果を聞いてもいないのに。






『……サスケくん、好きよ…好き………。』






天に託すように呟かれたその声は、自分でも驚くくらい弱々しくて。



サスケくんはほんの一瞬目を見開くが……次にはその眉をひそめた。

口は何とも達者だった。






「姉さん……オレはあんたを好きになりたくはない。」






―――ガン、ときたのはその時だ。

その言葉の内容より何より、“あんた”という親しみを除かれた呼び掛けに。






―『やだよ、サスケくん行かないで!ここに残って!お願い!』―






いやだよサスケくん、イヤよイヤ……。

ココニイテ、オネガイ―――……
























「…………じゃあな。」

『……!!』






その言葉でようやく現状を理解した。自分が切り捨てられたという事実を。






……いや。アタシは既に、とっくの昔から切り捨てられていたのだ。

それに気づきもしないで、今日まで過ごして。






(そっか…うん、そうだよ……そういえばあのときに返事、聞いてなかったもんな……。)






その思考がアタシの中にストンと落ちた。

気持ちいいくらい、すんなり噛み合った。
























終わる恋、ひとつ

そもそも彼はアタシと“離れたくない”なんて。

あの当時から、一言も言ってなかったじゃないか。


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