サソリ長編 | ナノ
17/1.














そもそも年の違うサスケくんを好きになったのは、アタシが面食いのミーハーだったからではない。






―――彼との付き合いは、そう……アタシが幼稚園児の当時にまでさかのぼる。
























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「先日お宅のお向かいに引っ越してきた者です。どうぞよろしくお願いします。」






そう言って頭を下げる母さんの後ろで、他人事のようにそれを見上げる5才のアタシ。






とても立派なお屋敷だった……その広さにつけて大家族ではないようで、ガランとした邸内が印象に残る。

アタシはやることもなく視線を泳がせていれば、そこでパチリと目があった。






「ほらサスケ、明日からサスケと同じ幼稚園に通うnameちゃんよ。」






そうやって手招きされれば、こちらを窺うように見ていた男の子が、ちょこちょことした足取りで近くまで来る。



その目は珍しいものでも見るようにアタシを凝視した。






「サスケはnameちゃんの一個下だけど、サスケの方がこのあたりのこと詳しいんだから、nameちゃんにいろいろ教えてあげるのよ?」

「……わかった。」






アタシから視線を外すことなく、その言葉に頷いてみせるサスケくん。

すると警戒を解いた彼が、アタシと変わらないその小さな手を差し出した。






「よろしく、nameお姉ちゃん。」






そんな彼に応え、アタシもギュッとその手を握る。



この先呼ばれ続けるであろうアタシへの呼称が、彼によって決定した瞬間だった。
























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それからアタシたちは、一緒に幼稚園に通うようになった。






「あっちが公園、こっちが病院……手は離しちゃ駄目だよ姉さん。」

『え、あ、うん……。』






その手を繋いで、歩調を合わせて。

お母さんに言われた通りにこのあたりのことを教えてくれるサスケくんは、アタシの方が年上なのにずっと多くのことを知ってる気がして。当時はちょっとふて腐れもした。






それと、数日後にはサスケくんのお兄さんにも会った。

イタチ兄さんはとても頭がよくて、その歳でもう塾通いだったため一緒に遊ぶ機会は少なかったけど。






「いいね、そのランドセル。」

『……!あ、ありがとう……早く来てね、サスケくん。』

「うん。オレもあと一年したら、そっちに行くから。」






そのうち一個上のアタシが小学校に通うようになってからも、お向かいさんであるサスケくんとの交流は途絶えない。

また一年が過ぎ、サスケくんも小学校に上がればアタシたちの仲のよさは更に加速して。






―――だがそんなある日、転機が訪れる。



会社を興していたサスケくんのお父さんの都合で、彼もろとも都会の方に引っ越すこととなったのだ。
























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そうして迎えた最後の日。

このときアタシは小学3年生、サスケくんは2年生。






まだ当時は人間関係の在り方もよくわからなかった、でもサスケくんが大切な存在だということは身に染みるようで。






『……お別れ、なの…?』

「……だって、父さんが………」

「でも本当に残念ね。このお屋敷だって、取り壊すんでしょう?勿体ない……」

「はい。長年同じ土地で暮らしてきましたけど、もうここへは戻らないので。」






「もうここへは戻らない」―――そのサスケくんのお母さんの言葉が、アタシを芯から凍らせた。






ぶわっと途端に溢れ出す涙。

それを正面から見ていたサスケくんはよほど驚いていた。






アタシがすがるように泣きつけば、たまらずサスケくんはよろめく。






『やだよ、サスケくん行かないで!!ここに残って、お願い……!!』

「こらnameっ!サスケくんを困らせるんじゃありません!じゃあ、もうこれ以上駄々をこねる前に。」

「ごめんねnameちゃん。いままでサスケに良くしてくれてありがとね。」






親同士の別れの挨拶が済むと、その手が容赦なくアタシたちを引き裂く。

サスケくんの方はといえば……何がなんだかわからず、悲しみよりも困惑が勝っているような感じだった。
























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その日以来、アタシはサスケくんのことがわからなくなった。






(何で、どうして……小さい頃から遊んで、おしゃべりして。ただそれだけだったのに……。)






姉弟みたいに暮らした日々が過去のものになるにつれ。

アタシはサスケくんにいままで、どんな気持ちを抱いていたのか考えるようになった。
























そうして導き出された一つの答え―――それは“好き”という感情。






だがそれは恋愛的感情でいう“好き”だったのか、単に姉弟愛的なものなのか。

幼いアタシの思考ではどれが本当で、何が正解なのかもわからなかったけど。






―『やだよ、サスケくん行かないで!!』―

―『ここに残って、お願い……!!』―






―――アタシが彼に“好き”だと伝えていれば、もっと強い言葉で彼に示せば……あのとき何かが変わったのだろうか。



そんな後悔の念だけが、しばらくアタシの頭を支配して離れなかった。
























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そんなある日、サスケくんと入れ替わるようにアタシの生活圏に入ってきた男の子。それがサソリだった。


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