03





 『大切な人を守りたいんです』

 彼に初めて会ったとき、そう言った彼を純粋に応援したいと思った。
 守れなかった自分の、二の舞になってほしくなくて。

 「ゆーま、おさむ、ちか」

 「うんうん、よろしくね、キリちゃん」

 そう言ってほんわか笑う千佳にキリはえへへと笑い返す。どうやら三人にはもう打ち解けたらしく、キリは三人に囲まれて笑っている。
 空閑がボーダー入隊を決意し、三人はチームを組んだ。サイドエフェクトがみせた理想の未来に近付きつつあることが、何よりもうれしかった。

 「解析が終わったぞ」

 「おっ、レプリカ先生仕事早いねー」

 レプリカはキリのブラックトリガーを迅に渡すと、説明しはじめる。

 「簡潔にいうと、キリのそのトリガーはアフトクラトルのものだ。ユーゴと調査した当初は、その好き嫌いの激しさから少し疎まれていたものだな」

 「・・なるほど。それでキリが適合した、と」

 「・・それに、何よりその頭の傷は、角の形をしたトリオン受容体をつけようとした時の痕だろう」

 「・・なるほど。ありがとう、助かったよレプリカ先生。遊真もな」

 少し沈んだ空気の中、その渦中にいるキリが大きな欠伸をした。

 「お、キリ眠いのか」

 「ん〜・・」

 うつらうつらしているあたり、もう半分寝ているのだろう。迅は苦笑してキリを抱き上げた。

 「おまえらも今日は遅いから親御さんに連絡してウチに泊まってけ。空き部屋もたくさんあるしな。おれはもうキリがダメっぽいから先に寝るよ」

 詳しいことは明日な、と約束してリビングを出る。

 (角・・か)

 あれだけキリが怖がっていたということは・・とここまで考えて迅は頭をふった。
 違う。これから考えるべきなのは彼女が過去に何をされたのかということじゃない。彼女をどう幸せにしていくか、なのだ。


  
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