02





 「ゆういちっ!」

 「わ、待て待てキリーー」

 基地のドアを開けるなり、ばっとキリが飛び出してきた。なんの準備をしていなかった迅はそのままキリと共に倒れこむ。

 「あのね、あしたはれーじのおむらいす・・・・」

 興奮気味に話すキリが、ふと隣で唖然とする三雲、空閑、雨取に気付く。

 「うぇ・・?」

 自分の腹の上に乗るキリが完全に混乱する前に、迅は慌てて紹介した。

 「キリ、こいつらは・・」

 しかし、遅かったのかキリはばっと駆け出すと基地の中へ戻っていく。

 「・・えっと、今のは・・?」

 「あれか、コイビトってやつか」

 「え・・!」

 「まてまてまて」

 誤解が大きくなる前に迅は三人を制止する。

 「あいつはおれの幼馴染。西条キリっていうんだ」

 これ以上隠しているとろくなことにならない未来が見えて、迅は溜息をつくとこういった。

 「じつはキリに関して遊真とレプリカ先生の知恵を借りたい」





 「・・なるほどな」

 一通り話を聞いた空閑はそう言って頷き、三雲と雨取は迅の後ろに隠れるようにしているキリをまじまじと見つめる。

 「もちろんメガネくんたちをウチに誘ったのは、キリが記憶を取り戻すために必要だとサイドエフェクトが言ってたのもそうだけれど、それだけではないからな」

 なんだかいいように言いくるめて、利用しているような気がして迅は苦笑しつつ付け加えた。

 「その・・西条さんはどれくらい近界に・・?」

 「五年」

 三雲のその問いに迅は即答した。キリが連れ去られた間に流れた月日のいつだって、彼女をもっとしっかり守ってやってやればよかったと後悔し、もしかしたら帰ってくるかもしれないと淡く期待を抱いたものだ。それぐらい、この五年はきつかった。

 「・・メガネくんたちは優しそうだし、キリもきっとなつくと思う。だからここに来た時だけでもいいから相手をしてやって欲しいんだ」

 自分が過ごした同じ五年でも、もっと過酷な五年を過ごしていたキリには安心していられる場所が必要不可欠だった。そしてまた、彼らもその一部だった。

 「・・うん。西条さん、きっと辛かったもんね・・私にできることがあるのならば協力したいな」

 「・・ぼくも、というよりぼくなんかでいいのなら」

 とりわけ優しい三人はそう言って同意してくれる。

 「ふむ・・しかし、キリはどこに連れていかれたのか分からないのか・・レプリカ」

 「了解した」

 「ああ、どうやって帰って来たのかも分からないんだ・・キリ、おいで。大丈夫だから」

 まだ空閑達が怖いのか、恐る恐る迅の背後から顔をだす。

 「初めまして、キリ」

 にゅっとレプリカがキリの前に現れ、キリはびっくりしたのか、迅の方を助けを求めるように見つめる。

 「大丈夫だ、大丈夫だから」

 そうなだめてやれば、キリは恐る恐るレプリカに会釈する。

 「早速だが、その世界に関連するものはないか」

 「あるよ〜。キリちゃんが持ってたトリガーが」

 そう言って宇佐美はキリのあのトリガーを差し出す。またキリが拒絶反応を起こすのが怖くて、迅はキリを引き寄せて膝の上に座らせた。

 「・・なるほど。ブラックトリガーか」

 「な・・!」

 それを手に取ってしげしげと眺める空閑に、他の二人が驚く。

 「ああ。しかもかなり好き嫌いが激しいトリガーでまだ誰も起動できていない」

 「そうか、でも大丈夫だな。結構、国によってトリガーの特徴ってあったりするからレプリカが調べればすぐだ」

 そう言ってキリのトリガーの解析はレプリカに任せ、三人に向き合う。

 「・・さて、本題にはいろうか」


  
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