01






 カーテンの隙間から差し込んだ朝日に、迅は目を覚ます。左腕に重さを感じて微睡む瞼を押し上げれば、目の前にキリの寝顔が映る。そんな些細なことが嬉しくて、右手でキリの頬をつついた。

 結局あの後、キリは宇佐美や林藤には少し打ち解けたものの迅の傍から離れるのを嫌がったので、そのままなだれ込むように迅の部屋で一緒に寝たのだ。
 もう一度寝る気も起きないので、風呂でも入るか、とキリを起こさないようにそっと左腕を彼女の下から抜く。そのままそっと部屋をでようとベッドから抜け出そうとした、が。

 「・・ん・・ゆう、いち」

 ぎゅっと服の裾を掴まれ、振り返ればごしごしと目を擦るキリがいた。

 「キリも、いく」

 「だめだ、キリはもう少し寝てろ」

 「やだ、ゆういちといく」

 頑固なところは記憶がなくても変わらないのか、と思わず苦笑いする。

 「でもなー、さすがに風呂までは一緒に入れないからな」

 「なんで?」

 「いや、なんでも」

 「やだ」

 うっと涙目で見上げるキリに弱ったとばかりに迅は頭をかいた。個人的に魅力的なお誘いではあるが、幼子同然状態の今のキリに手を出したら間違いなく死ぬ。社会的に。

 「すぐ戻ってくるから、な?」

 そう言ってキリの頭を撫でて足早に部屋を後にしようとした。

 「キリもおふろいく!」

 「だから・・っておいおいおい!」

 置いて行かれるという恐怖から慌てて、追いかけてきたキリは宇佐美に借りたワンピースを脱ごうとしながら追いかけてきて、そのまま迅とぶつかって廊下になだれ込んだ。





 やはり、一番目が覚めるのは顔を洗うことだと思う。

 木崎は肩にかけていたタオルで顔をふくと洗面所を後にする。水で冴えた頭で、朝食は何にしようかと考えていると、珍しく焦ったような迅の声が聞こえてきた。

 「だから・・っておいおいおい!」

 開かれた迅の部屋から、迅が雪崩れるように出てくる。

 「・・なんだ、朝か・・ら・・・・」

 そして、迅の上にワンピースがほとんど脱げかけた少女が倒れこむ。

 「げっ・・れ、レイジさん・・」

 木崎に気付いた迅は引きつったような笑みを浮かべ、少女は小さく悲鳴を上げて部屋に戻っていく。対する木崎は

 「・・邪魔したな」

 見なかったことにした。


  
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