恋は思案の外 | ナノ

02


 カレンダーは秋だというのに、残暑のあつい日差しが眩しくてキリは目を細める。

「あら、眩しいの、キリ」

 そう言って隣を歩く母は笑った。

 「だから言ったじゃない。帽子をかぶりなさいって」

 だって、帽子はあんまり好きじゃないんだもの

 「ダメよ、日焼けもしちゃうでしょ」

 はいはい、こんどからはかぶりますって

 「もう、キリは本当に捻くれてるんだから」

 そう言った母の背後に、大きな黒い亀裂ができる。

 お母さん!

 「! これがいつもキリを狙う怪物? 大丈夫、言ったでしょ。これからは私が守ってあげる」

 次の瞬間、母の姿は近界民の大きな足が視界に映るとともに、消えた。









 「!」

 ばっとキリはそこで目を覚ました。視界いっぱいに真っ白で無機質な天井が映る。ばくばくとうるさいくらいに鼓動が木霊していたーーよかった、生きてる。

「ここ・・どこ・・?」

 「おっ、起きたか」

 隣からそんな声が聞こえて振り向けば、米屋が紙パックのジュースを飲んでいた。

 「米屋・・? 私、えーっと・・」

 勢いで起き上がろうとすると、腹部に鈍い痛みが走る。キリはゆっくり起き上がると考えこんだ。
 病院と似ているが、違う。壁の白さに目がチカチカしていると、隣の米屋は言う。

 「ここは本部の医務室だよ。病院に移してまた近界民呼んだら困るし、現にここが一番安全ってとこかな」

 それと、と米屋は続ける。

 「あの弾バカには感謝しとけよ〜。血だらけのお前抱えてきたのはアイツだから」

 「出水が・・?」

 瞬間、ガラッと勢いよく扉が開いて本人が入ってくる。

 「あっ、出水。ありがーー」

 瞬間、視界いっぱいに彼の制服が映る。それと同時に、ふわっと体が温もりに包まれた。

 「・・心配させんな、バカ」

 震える声がそう耳元で聞こえて、たまらなくキリも抱きしめ返す。

 「・・ゴメン、ごめんね出水」

 「はいはい、オレもいんの忘れんなよ〜」

 米屋の一言に、キリと出水はばっとお互いに体を離す。一気に顔に熱が集まって、キリはぱくぱくと口を動かす。正面の出水も逸らした顔がどことなく赤い気がした。そんな二人を米屋はニヤニヤ見つめる。

 「もしかして、オレお邪魔?」

 「うっせ、黙れ槍バカ。なんか飲み物買ってくる」

 「えー、オレも?」

 「いいからこいバカ」

 そう言って、立ち上がった二人は扉の方を見て固まった。つられてキリも、そちらを見れば、待ち望んでいた人物がそこにいた。

 「か、唐沢・・!」

 「おや、私も邪魔だったかな」

 にこり、と笑う唐沢に出水は一気に冷たい表情になる。

 「いいえ、どーぞ。おれらはちょっと出てくるんで」

 そして、部屋には唐沢とキリだけになった

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