01 明け方に閉じる瞼
白い砂漠の王国
美しい白の大理石の王宮
豪奢な意匠の宮殿の前には、人だかりが出来ていた
彼らはこの国に住まう民
そして皆一様にこの感情を抱くのだ
「ああ、今回も駄目だったか」
彼らの視線の先には
昨晩、熱に溺れた女の
無惨な、死体
きらびやかな薄衣も、豊満な肉体も、その悉くが斬り裂かれ
乾ききった血の黒に、固まりきった脂肪の白に染まっている
かつては情欲を誘ったその姿に、今や誰も誘われることは無いだろう
彼女は国王直々の寵愛を得ていた訳ではない
否、王も女も互いに想いあうことなどなかった
何故なら、彼らが邂逅したのは、熱に浮かされた夜を迎えた、その当日だったのだ
───白い砂漠の国王は、狂っている
国内外の誰しもが口を揃えてそう言った
毎夜毎夜、国の処女を抱いては、次の日に処刑する
この国では、純潔の乙女は安らかに過ごすことを許されないのだ
乙女の父は、母は、恋人は、いつ我が宝が奪われるかと不安な日々を過ごしていた
「…………。」
無惨な女を囲う人だかり
少し離れた先でそれらを見つめる小さな影
その胸に、熱砂の様な決意を抱き
王宮へと、足を運んだ