「ホワアァァァーーーっ!!!」
「ぐっ」
恥ずかしさと恐怖が入りまじり、もはや其処に私の意識はない
お断りします。身体がそう叫んでいるのか、私は両腕を交差させ、そのまま船長にクロスチョップを喰らわせる
船長も油断していたのか、対してダメージは行ってないだろうに、その大きな体躯がぐらりとよろけた。私はその隙にベッド上をゴロゴロと転がり、力の限りドアを目指した
「おい待て、生き血を寄越せ」
「ホラー映画かっ!!嫌です怖いですお断りです!!!」
淡々とした言葉の調子は変わらず、その長い脚はツカツカツカと早歩きで私を追う
かくいう私は、殺人鬼から逃げる仔羊の如く、必死に船内を駆け回る
「待てナーシャ」
「いやあぁぁぁぁーーーッ!!」
後に船員、ファウストは航海日誌にこう記す
もし映像電伝虫があったなら、二人のチェイスを収めて、立派な作品を作り上げただろうに、と
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