無遠慮なフォーク


「あれ、ホーキンス船長それ…」
「嗚呼……今日のおれの運勢に陰りが見えたのは、恐らくこの事だろうな」

目の前に広がるオードブル。略奪の為に訪れた島の酒場で華やかな晩餐…になるはずだったが
ホーキンス船長の目の前に置かれた皿には、油滴る肉々しい肉の数々!!びっくりするくらい肉しか乗ってない!!
略奪自体は上手く行ったためまさか船長の占いが外れたのかな〜…?と船員一同訝しんでいたけど、なるほど納得だ
我らがホーキンス船長は肉が嫌いで、その日の運気を上げるためでもない限り決して口にしない。肉を食べずしてどうやってその肉体を手に入れたのか
赤いジャケットの船員が激昂しキッチンに殴り込みに行った。おやめなされまたスパゲティ股間にぶちまけられるぞ


「船長、どうします?何か追加で頼みましょうか」
「…いや、いい。今日はもう碌なことにならない」


船長はそれだけ言うとちびちびとお酒に口を付けた
…船長を置いて食事を堪能するというのも、些か配慮に欠けるのではなかろうか。私はなかなかお皿に手を付けられなかった

「………。」

何を思ったのか船長、フォークを手に取りぷすりとミートボールにそれを刺した。そして

「ん。」

なんとミートボール付きのフォークを私の方へ向けるではないか!食べろということか!?
突然の事に反応できず固まっていると、あぁ、と船長が得心したような声を上げる




「あーん」



その愛らしい文字列を発したのは、私でもなく他の船員達でもなく


ホーキンス船長、ご自身である


驚きに驚きが重なり、ぽかんと開かれた私の口に、無遠慮なフォークが入り込んだ




────
「せ、船長!せんちょう!!もう入らないです…!!」
「…あぁ、すまん。次々と入ってく様が面白くてな」
「え〜んこんなん私にお肉ついちゃう〜!!」
「……運動なら多少手伝ってやるが」
「へ?」
「まぁ、それは船に戻ってからだな」




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