8月6日
8月6日。トキヤの誕生日だった私はプレゼントを持ってテレビ局へ向かった。








「あの…これを受け取ってくれませんか?」


「トキヤ…コレ…」




しばらく談笑して、一緒にケーキを食べるとすぐにスタンバイの呼び出しがかかった。
トキヤはこれから仕事なのだ。


するとトキヤから小さな箱を手渡されたのだった。
乙女が期待するアレなのだろうか…彼氏の誕生日だと言うのにプレゼントを逆にもらってしまい何となく申し訳ないがにやける顔を抑えることができなかった。





「ふふ、家に帰って開けてくださいね。」


「うん!」


「私の誕生日を祝ってくれているというのに、私が仕事なんて本当にすみません。」


「いいよ!頑張ってきてね。私はトキヤの新曲頑張って作るから。」


「この鞄、大事に使わせていただきますね。」





いつも台本やら歌詞やら仕事の資料やらたくさんの書類を大きなバックに入れて持ち運んでいるトキヤ。ふと鞄をみるととても年季が感じられて所々剥げていたりほつれていたりしていた。大事に扱ってはいるのだろうが、もしこの鞄を変えても大丈夫ならば…と思い選んだものだった。
トキヤはとても喜んでくれて「私のことをよく見ていてくださるんですね」と優しく笑ってくれた。


トキヤを見送り、私も家に急いで帰ったのだった。

だって、早く箱開けたいでしょ!!?



―――――――――――――――




「「「…は?」」」





たまたま廊下ですれ違った音也と嶺ちゃんは仕事が終わってこれから帰るところだったらしく、一緒に帰ることになって、事情を話すと一緒に見たいとせがむので(特に嶺ちゃんが)、家に上がってもらうことにしたのだった。

声の揃った3人は呆気にとられていた。
私にいたっては眩暈まで起こしそうだ。





「えーっとぉ、彼女に渡す小さな箱と言ったら何がベターか知ってるかな音やん。」


「ゆ…指輪だと…思ったんだけどな」


「はいはい正解〜〜〜!!………して、これは何かなぁ名前ちゃん」


「…USB」


「大正解っ」





そう、中身は私の期待した指輪ではなく、USBメモリー。




「何じゃこりゃあああああああああああ!!!」


「ちょっ…まぁまぁ名前落ち着いて!!」


「これが落ち着いていられるかぁあああ!!!トキヤのドアホ!変態!!」




暴れだす私を何とかなだめようとする音也だったけれど、私のモヤモヤした気持ちは晴れることはなかった。




「こんなことするのアイアイくらいかなぁって思ってたけどそうでもなかったね。」


「それはそれで藍ちゃんに怒られるよ嶺ちゃん!」





嶺ちゃんが藍ちゃんもやりそうだなんて言ってるけど、藍ちゃんはもっと素直に、データに忠実にベタな事をやるであろう。
そんなやり取りをしていると音也がパソコンの電源を入れ始めた。




「ねぇねぇ、パソコンに入れてデータ見てみたら?何か入ってるかも。」


「…それもそうだね。」




確かに、空のUSBだったら本気でトキヤに箱の角で頭をブン殴っている所だ。
パソコンがデータを読み込むと動画ファイルが1つだけ入っていた。
それをクリックすると、見たことのある映像が目に映る。

トキヤの部屋だ。




『えー…仕事が入っているという事が事前にわかっていたので、この映像を撮りました。名前と共に長い時間過ごせないことをどうか許していただけますか?』


「ふふ、さっきも謝ってたじゃん。」





トキヤって本当に心配症で、周りに気を遣いすぎだ。
そんな所もひっくるめてトキヤを好きなのだから、思わずトキヤらしいなと笑顔がこぼれた。






『私は作曲にも興味があったので…それに名前が行っている作業を近くで見ていて自分なりに…その、曲を作ってみました。』


「「「えええ!!?」」」




トキヤが作曲…って言うか、そうなると作詞作曲歌全部トキヤ…。
またも3人の驚きの声が揃ってテーブルにかぶりつくものだからパソコンがガタガタ揺れいていた。




「何それトキヤってば凄っ!」


「トッキーってば何でも熟しちゃうし、それをこんなサプライズだなんて嶺ちゃん嫉妬!」


「うるさい二人とも!!」


「「は、はいっ!」」




ギャーギャー騒ぐ2人を怒鳴ると整列して姿勢を正した2人が返事をした。





『拙い出来映えですが、どうか許してください。名前への想いを込めました。聞いてください、“愛しています”』


「「おお〜ラブソンg…「シィィィィィィっ!!」


「「…」」




またも喋り出す2人を黙らせて、私も姿勢を正して息を呑んだ。



『愛しています そう伝えると頬を染めた君が愛しくて

つい、通じ合っていると思って君を不安にさせた日も つい、言い過ぎて喧嘩した日も

私にとって全てが宝物 例えすれ違った日々がこれから訪れようとも 君となら乗り越えられる 
私が必ず守るから どうか忘れないで 愛しています 〜♪』




トキヤが電子ピアノを弾きながらスローペースで始まった曲はとっても心地よく聞こえた。
ピアノを弾いて真剣に楽譜を追う横顔はとても格好良くて、歌詞に込められたメッセージが堪らなく愛おしかった。



トキヤ、愛してる。生まれてきてくれてありがとう。これからもよろしく。


happy Birthday Tokiya !


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