「トキヤー」
「何ですか。」
「楽しい?」
「えぇ、とっても。名前にずっと触れていられるなんて、これ以上の至福はありませんね。」
とってもとってもご機嫌がよい恋人は本日アイドル業休日。
いつもならばファンの子達を紳士に扱い、大人な色気を醸し出す一ノ瀬トキヤは、今は私の太ももを枕にして読書中である。…所謂、膝枕。
「…楽しそうですね。とても。」
「名前はこうしているのは嫌ですか?」
柔らかい笑みで私の太ももにすり寄るトキヤ。
恋人に甘えられてる感じも嫌いじゃないし、あのトキヤがリラックスして私に身を任せているっていう信頼感の心地よさが私を満たしていた。だけど…
「嫌じゃない。けど…何かズルい。」
「何がですか?」
「私ばっかりド…っ」
パチリと視線があった瞬間、心臓が破裂するかと思うくらいドキっと音がしたのがわかる。トキヤが私を見上げる顔が美形すぎて眩しい…やっぱりズルい!!!
「ド?」
「いい、やっぱりいい。言ってる自分が恥ずかしいから。」
「ダメですよ、さぁ名前。言ってください。」
首をブンブンと振って、もう何も言わせないでくれと訴える私を下からトキヤの手が伸びて私の頬を捕えた。優しく諭すように囁かれて、トキヤが触れている頬が熱くなるのがわかった。
「トキヤの意地悪。」
「ふふ、頬を朱く染めた可愛い名前を独り占めできる私は幸せ者ですね。」
「もぉ!本当に、私ばっかりドキドキしてるなんて恥ずかしい。」
トキヤの余裕の笑みが何だか悔しい。触れられた頬が引き寄せられて、耳にかけていた髪がサラリと流れた。
「もっともっと、私だけにドキドキして欲しい…」
「…ん、してるよ。今も、すっごく。」
トキヤの綺麗な指が髪をかきあげて、優しく唇を自分の唇に近づけた。
たまにはこんなにも甘えられるのも悪くない…
でもトキヤ、これ以上ドキドキさせられたら、心臓もちません。