「ふふ、俺、君の事ホント好きだよ!」
仕事を終えて帰ってきた私に、音也は突如告白をした。
「…急にどうしたの?」
「あーもう!ノリ悪いよ。」
チェっと拗ねながら口をアヒルみたいにしてプリプリしているのは紛れもない、現役アイドルの一十木音也。
「嶺二に毒されちゃったのかなぁこの子は。」
私の同期である寿嶺二は同じくアイドルで音也とトキヤ君にブラザー制度の先輩としてかかわった。嶺二と音也は本当に気が合うらしく、逆に私とトキヤ君はおバカな二人を見てはため息をついていた。
私と音也が付き合いだしたのはブラザー制度が終了してしばらくしてからだった。
「え?どーゆう意味?」
「そのコントチックなノリ…そーゆうのって、もっとこう…」
女の子が求める恋愛の云々を音也に言ったところで仕方のない事。それに、何にでも真っ直ぐで情熱のある音也だから好きになったんだし。
「うん?」
「いや、何でもない。」
「言ってよ〜。」
駄々をこねだした恋人をちょっと可愛いなと思えばいいものを、ウザいと感じてしまった私、本当にごめんなさい。
だけど、仕事で疲れてるし…音也君、お願いだから私に癒しをください、と願ってしまうのは罪でしょうか。
「もっと…メロドラまではいかなくても、しっとりうっとり…乙女がキュンとする王道なカッコイイ男の色気が漂う感じよ。」
「………」
「あ、何かすごく考えてるみたいだけど、そんなに期待してないから大丈夫。いまの音也のままで十分だから。ね!」
物凄く深刻な顔をして黙ってしまったので、何だか申し訳なくなってきた。
謝ろうと音也に近づいて行くと腕を引かれ、すっぽり音也の大きな胸板へ納まった。何事かと顔を上げると、唇に柔らかいものが当たった。チュっと音がして、離れたと思ったら音也がニコリと笑った。
ドキッと心音が跳ねたと思ったらまた唇が優しく包まれて、ギュッと抱きしめられた。
「名前、愛してる。」
唇が離れていくけれど、視線は離れない。じっと見つめ合った時、音也の唇が愛を紡いだ。
「…っっっ!!!」
「あはは、かぁわいい〜!」
心臓がバクバク言ってる。
音也はやっぱりカッコイイ。どこか子供っぽいのに、一瞬で私の心を熱く湧きたてる。
年下のお子様だとばかり思っていたのに、どんどん大人になる私の王子様。
「お、音也…誰にそんな技…」
「ナ・イ・ショ☆」