おめでとう、大好き。
しばらく海外ロケやら映画の撮影でほとんど音楽活動ができていなかった。
まぁ、個人的にギター片手に歌ってはいたけど。

だけど、俺が欲しいのは名前の笑顔であって、名前のキラキラした曲が大好きだから今日こそは彼女の家に寄ってゆっくり今度の新曲の話をしようと決めていたんだ。

名前はあまり我儘を言わない。仕事にたいしては弱音も言わないし、妥協もしないし頑張り屋。口には出さずともどれだけ努力しているかは伝わる。プライベートでもそういった一面があって、内に秘めたものは熱いけど、自分から積極的に愛情表現をする子ではないから、その分俺がいっぱいいっぱい愛を伝えてる。



「お誕生日、おめでとう。」


「うわー!名前、大好き!」


インターフォンを押してしばらくするとドアがあき、パンッとクラッカーがなって、名前が拍手しながらバースデイソングを歌ってくれた。今日が自分の誕生日だったなんて全く考えてもいなくて、すっごく嬉しくて思わず抱きついた。

すると名前は俺を受け止めて背中に腕を回すと、ニコリと微笑んで「喜んでもらえて良かった。」と照れたように言った。その仕草が可愛くて、またギューっと抱しめた。



部屋へ通されて中へ入る。久しぶりの名前の部屋は相変わらず居心地がよくて落ち着く。
テーブルに置かれた小さなホールケーキには蝋燭がささっていてなんだかとってもワクワクする。


「ねぇねぇ、手作りケーキでしょ?これ。」


「うん、あとね…これ。」


「何?」


差し出されたものはカラフルな折り紙が張り付けられて、真ん中に俺の似顔絵と寄せ書きがされた大きな画用紙だった。


「この前たまたま近くでBGM担当してるドラマの撮影があって見学してたから、施設に寄ったの。その時、皆で作ろうって話になってね、子供たちと一緒に作ったの。」


「うっわ〜〜〜〜!!!!ありがとう!!すっごく嬉しい!」


俺は施設育ちだから、家族で誕生日を祝ってもらったことはないけど、いつも施設の仲間が互いに誕生日を祝ってパーティーを開いていた。
もう施設を出て何年も経つけれど、仕事の合間に立ち寄っては小さなライブを開いたり、子供たちと一緒に遊んだりしていた。だから、そんな仲間からのプレゼントはとても嬉しくて仕方なかった。

寄せ書きに書かれた文章を一つ一つ丁寧に読んでいると、名前が少し照れくさそうに近づいて、ラッピングされたディスクを渡してくれた。


「あともう一個私個人から…はい。」


「うわぁ…これ、俺に?新曲?聞いてもいい?」





ギターにベース、ドラムとピアノが弾けるアップテンポなサウンドに流れるメロディラインはとてもワクワクするような、だけどとっても心地よくてとてもいい曲。

転調の部分がすごくかっこよくて、ここにどんな歌詞を入れようか考えると楽しくて仕方がない。

曲が終わってヘッドホンを外そうとしたが、すぐピアノの音色が1音響いて不思議に思い聞き続ける。

すると、「愛するあなたへ贈ります。」と名前の声がしてピアノの伴奏が流れる。
これも知らない曲だ…きっと名前が作った曲。





弾き語りのワンコーラスのみの曲には名前の可愛らしい歌声と、それを引き立たせるピアノの軽快な旋律。

歌詞も名前の手がけたものだろう…

曲が終わってすぐに俺は名前を抱き寄せた。


「きゃっ…音也?」


「誕生日にこんな素敵な曲を2つも…とっても嬉しい。ホント、大好きっ」


「あのね…私、音也みたいに素直に口に出して愛情表現てできないから…だからすごく不安で…だけど…その…音也が好き、だから。」


こんな素敵な誕生日を迎えることができて、俺って超幸せ者かもしれない…顔が思わずニヤついて、こんな顔してるのがトキヤに知れたら絶対に怒られそうだ。


「ふふ、名前が俺を大好きってことくらい知ってるよ。」


「それ、当たってるから別にいいけど…間違ってたらただの自信過剰。」


「だって、いつも曲に愛がたっくさんこもってるからね。だから、俺もこの曲にたくさん愛をそそぐんだ。」



どちらからともなく唇が触れると、2人してフフっと笑い合った。


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